商業施設新聞
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No.447

大震災から3年、残雪の三陸、福島を巡る


登坂 嘉和

2014/3/4

イオンタウン釜石の外観
イオンタウン釜石の外観
 3月11日で東日本大震災の発災から3年が経過する。本紙でも復興の状況を特集としてまとめるために、岩手県釜石市や福島市へ取材に伺った。これまで四季を通じて機会あるごとに被災地を見てきたが、今回は2月中旬の全国的な豪雪で、珍しく白銀の世界が残る東北地区を訪れた。そして仮設住宅やそこで暮らす人々を目の当たりにして、被災地の現実を改めて知ることができた。今年は各地で復興公営住宅が次々と完成する。また、釜石市では津波浸水地区内の中心市街地に「イオンタウン釜石」が開業する。住宅の再建や街の再生、企業の進出などが活発化しており、ようやく復興が形となるようだ。

 3月14日に釜石市の中心市街地に「イオンタウン釜石」が開業する。同市が津波浸水地区に大型商業施設の誘致を目指して、イオングループや新日鐵住金に要請したものだが、岩手県盛岡市に本社を置くイオンスーパーセンターを核店舗に56店が出店する。市とイオングループの3者は大規模災害時の支援協定を締結し、同施設を一時避難場所とすると共に食料や生活物資を提供するとしている。気仙沼市の出身で、実家の店が津波に流された経験を持つイオン東北代表の村上教行氏は、積極的に交渉に当たり、早く街に灯りを燈して復興を加速したいという。

 ただ、釜石市においても復旧・復興は思い通りに進んでいるとはいえない。同SCにおける雇用の確保や地元からの出店者が少ないことが挙げられる。イオングループは、先行してインターネットを使った求人募集を展開し、SC全体で620人の採用に対して430人を確保しているという。各種専門店も募集を行っているが、ユニクロは首都圏並みの時給1100円を提示している。また、テナント募集は開業前に2回の説明会を開催したが、全63区画のうち、56店の出店にとどまり、このうち県内から18店、市内は2店と低調だ。

 イオンタウンは、三陸鉄道南リアス線の運行再開や、三陸自動車道の全線開通を見据え、観光客を含む商圏拡大に期待している。地元商業者と協力して中心市街地の活性化を図る考えで、イオンタウン釜石もさらにブラッシュアップして、地域の名店を誘致したいという。

 一方、福島県は、原子力災害により、被災者は元々の居住地から13万7306人(1月時点)が県内外へ避難している。震災関連死は死者行方不明の3461人に対して1635人と約半数に迫り、被災3県では福島県が半数を超え、先が見えない不安が影響している。

福島市中心街の中合福島店
福島市中心街の中合福島店
 国は昨年に復興加速化の指針を発表しており、原子力災害に対処する福島県を積極的に後押しする。特に産業分野では2014年に、郡山市の福島再生可能エネルギー研究所や、福島空港メガソーラー、小名浜太陽光プロジェクトなどが稼働する。さらに郡山市では4月に「東京ガールズコレクション」、10月に「ご当地グルメでまちおこしの祭典!B-1グランプリ」を開催する。

 観光業の再生も重要な課題で、震災当初の11年3月の宿泊者数は前年比約25%まで落ち込んでいたものが、大河ドラマ「八重の桜」などにより、13年9月には同93.6%まで回復した。福島県内を車で移動する際、ラジオから復興支援の歌が何度も流れてくる。現地に入ることで、普段の生活で見えない、感じないことに気付かされる。福島県の復興推進の担当者は、県外では原発事故のニュースが多く流れているが、「来て見て食べて頂き、福島県の現状をもっと知ってもらいたい」という。
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