3DPM(3次元プロジェクションマッピング)による映像手法を耳にし、見る機会が増えてきた。3DPMとは、物体や建物にプロジェクターで映像を表示する新たな視覚表現技術。投射映像の一部分や凹凸に合わせて三次元映像を貼り付け(マッピング)、投影対象が立体的に動いているように見える。欧州を皮切りに世界でその芸術性を取り入れた広告事例が高く評価され、上海や北京、香港、シンガポールでも注目されている。
2013年12月末から14年初頭にかけて、プロジェクションマッピングを手がけるチームラボ(株)(東京都文京区)が、全高約16m、解像度7K(フルハイビジョンの7倍)の滝が岩に見立てたアウディのスポーツカー「Audi R8」に打ちつける作品をアウディジャパンのショールーム(東京都渋谷区神宮前)で披露した。コンピューター上の仮想空間に再現したAudi R8に打ちつける水の動きを物理計算して滝をシミュレーションし、実際のR8にプロジェクションマッピングした作品である。大きな滝は、触ってみないとそれが光による映像だとわからないほど鮮やかな水の動きを見せた。チームラボの猪子寿之氏によると、「プロジェクター機13台を使って表現した」という。
2階から見た滝の映像。
商業施設への設置も期待される
滝の表現には緻密な計算がされている。水は無数の水粒子の連続体で表現し、粒子間の相互作用を計算、滝を物理的に正確な水の運動シミュレーションとして構築した。全体の水粒子の中から任意で選んだ0.1%の水粒子の挙動によって空間上に線を描き、その線の集合で滝を描いた。無数の線の裏側には、その1000倍の水粒子が存在し、それらの全体の相互作用によって線の曲線が決まる。それを7K解像度で超微細まで描いた映像作品として表現した。
高さが16mもある滝なので、本物の滝と見間違えるほどの大きさである。これに音響効果が伴えばさらに迫力が増すと思われる。値段がいくらになるのかはわからないが、今後は商業施設での応用に期待したい。大規模商業施設の吹き抜け空間を利用して、この滝の大迫力を演出すれば大きな集客効果につながるだろう。
筆者がプロジェクションマッピングを見たのは、13年3月に西武池袋線と東急東横線、横浜高速みなとみらい線が相互直通運転を開始した記念に、西武鉄道の飯能駅(埼玉県飯能市)で公開された映像と、それに先立つ同年1月に3DPM試写・体験会が開催されたことに次ぐ3度目である。回を重ねるごとに、映像の精度が向上し、芸術、広告分野で評価が高まっている。