(学)北里研究所(東京都港区白金5-9-1、Tel.03-3444-6161)では、北里研究所100周年・北里大学50周年の創立記念事業最大プロジェクトとなる新北里大学病院が2013年12月に竣工した。今後、医療機器の搬入・設置、仕上げ工事や外構工事などの準備を進め、救命救急・災害医療センターと手術部門を中心に超急性期医療を担う病院として、5月7日にオープンする。並行して、北里大学東病院の改修工事も進める。
北里大学病院(相模原市南区北里1-15-1、Tel.042-778-8111)の新病院は、「成長する病院」をテーマに、患者・家族の視点に立った環境整備、職員の労働環境の向上、教育・研究施設の充実、災害拠点病院としての施設整備、安全性とフレキシビリティーの高い病院づくり、環境にやさしい病院づくりをコンセプトに掲げ、これまでに培った病院運営ノウハウと先進の思想を随所に取り入れた。
建物は、免震構造のRC・SRC・S造り地下1階地上14階建て延べ9万2776m²の規模となっており、既存棟から中央診療部門、病棟、外来部門など、ほとんどの機能・施設を移設する。地下1階~地上4階の低層棟に外来、検査、診断、中央診療部門を配置し、5階から1フロアの床面積が狭くなり、5階が機械室、6階以上が病棟となる。病棟は、南面に向かって鳥が羽を広げた形をしており、より多くの光を採り入れられる。
また、メンテナンスの効率化を図るため、病棟の外側にバルコニー(工事用の足場)を巡らせてあり、外壁内部に各種配管を施してあることから、病室内などに影響を与えずに外側で工事することが可能となっている。病棟の壁には、最上階から6階までつながる大型のブラインドを設えてあり、建物に重厚感とデザイン性を与えつつ、省エネ効果を持たせた。各病室には腰掛兼用の外気取り入れ口を備える「エコシャフト自然換気」で、換気と省エネを両立した。
診療部門、手術部門、検査・診断、病棟など院内全体で85カ所のエアシューターの送受ポストを設置し、A~Fの6系統の配送ルートにより、書類、輸血バッグ、検体、薬剤などの配送効率を向上した。
フロア構成は、地下1階に放射線治療、放射線画像診断、放射線核医学、病院病理部、栄養部、薬剤部などを集約している。
地上1階は、救命救急・災害医療センター、総合診療部・内科総合外来、整形外科、形成外科・美容外科、放射線画像診断、医事課総合カウンター、TSC、薬剤部、放射線一般撮影・CT・MRIなどを配置し、救命救急・災害医療センターには、蘇生室3室も設置、血管造影装置を導入する。また、3次救急とは別に2次救急の患者に対応する24時間体制の診療部門を専用に確保。また、感染対策として入り口を別にした小児科および産婦人科の外来専用診察室も確保した。1階には24時間体制の防災センターも開設する。
2階は集学的がん診療センター、中央採血・生理検査、内科専門外来、耳鼻咽喉科、外科総合外来(一般、心、呼、脳)となる。集学的がん診療センターには、抗がん剤製造室、会議や実習に使うカンファレンス室、40のリクライニングソファーや、20床のベッドスペースを備える。
検査部門では、これまで時間200人であった中央採血の6ブースを、12ブース、時間400人の検査体制に倍増させた。生理検査のエコーも5室から12室へ、化学検査は時間600人、尿検査は時間150件へと増強した。各種検体が届いてから45分で結果を出すことが可能となり、さらに、3次救急に対応して昼夜ともに同じ検査速度を維持する。自己採血は、現在の1日1~2件に対し、5件に増強する。トレッドミル2台、聴覚検査5室、平衡機能検査1室、脳波検査3室、筋電図や神経機能の検査室なども備えている。また、感染症や細菌に対応するP2エリアも設置している。
3階は皮膚科、泌尿器科、乳腺外科、眼科、産科、婦人科、小児科、精神神経科、歯科の各外来診療部門、遺伝診療部、内視鏡センター、血液浄化センター、病院病理部となる。
4階の総合手術センターには、手術室20室と中央材料室、麻酔科などを設けており、脳血管、腹部および胸部血管、冠動脈手術など向けに、血管造影装置を備えた手術室4室を備え、このうち1室は緊急時に活用する。経皮カテーテルを用いた大動脈ステント治療やCTを備えた脳神経外科手術のIVRセンター、ダ・ヴィンチ手術室、内視鏡外科手術室4室など、使用用途に合わせた手術室構成とした。内視鏡手術は、現在、泌尿器科、婦人科、呼吸器外科、膝や肩の疾病・疾患に年間1000件ほどをこなすが、ニーズが増えており、さらに増やすことが可能となった。
このほか、心臓移植をはじめ、脳血管外傷手術などに対応するEICU(CCU、BCU含む)、シリコンビーズベッドや熱傷浴室を備えた熱傷患者の監視病室、GICU、救急一般病棟を配置している。別フロアの周産期・小児などのPICU、MFICU、NICU、GCUやHICUを合わせたICUは計100床にのぼり、うちGICUが20床。5階は機械室、6階以上が病棟となる。
病棟は、6階が産科病棟、MFICU、NICU、GCU、PICU、HCU、小児一般病棟、7階が婦人科と眼科、8階が脳神経外科、神経内科(SCU)、膠原病感染内科、9階が耳鼻咽喉科、皮膚科、10階が循環器内科、心臓血管外科、血管外科、11階が消化器内科、内分泌代謝内科、外科、呼吸器外科、12階が整形外科、泌尿器科、13階が乳腺・内分泌外科、形成外科・美容外科、総合診療部、血液内科、麻酔科、14階が特別個室となる。
14階は、個室19床を設置、「S」「A」「B」「C」のクラスに分類され、最上級の「S」はファミリーマンションほどの床面積を専有し、ミストバスも装備している。家族など見舞い客専用のバストイレ、居間も用意した。フロアには、個室19床専用のラウンジやメディカルコンソール、1階から直行するVIP専用エレベーターも備えている。
一般の病棟は、1フロアにおおむね80床(1看護35~40床)を設置、個室(有償タイプ)と4人部屋(有償タイプと無償タイプ)を設定し、4人部屋は間仕切りで個室にすることが可能である。ナースステーションには、これまでの経験を生かして、畳んだ車椅子3台が置けるスペースを確保するなど細かい要望を反映した。
ナースステーションのほか、病室・患者により近く、よりきめ細かい対応ができるようナースピットを置いたほか、廊下幅やサロンなどの共有スペースは可能な限り広く確保した。また、感染症対策として、専用の浴室が必要な患者・病室以外では、病室の浴室を廃止し、各病棟にシャワーブースを設けた。
新病院では、エコ医療環境(スマート・エコホスピタル)の実現を目指した。主な装備・取り組みでは、ゼロエナジー病室(エコシャフト自然換気、井水熱+太陽熱放射空調、太陽熱+熱回収ヒートポンプ給湯、太陽光発電直流給電、高効率LED照明、脱臭・臭気センサー換気、生体リズム快適制御)、ロングライフ×パッシブのインテグレーション(共同溝クールヒートトレンチ、手術室タスクアンドビエント空調)、生体・運用センシングによる最適制御×高効率システム(在室人員照明制御、厨房スマートメーター換気量制御、医療機器待機電力制御:中央診療・外来、脱臭・臭気センサー換気:中央診療・外来、高効率熱源システム)、エコ情報の見える化(環境情報表示:デジタルサイネージ、LCCO2管理BEMS設備)、継続的なエコ推進(エコドクターコンソーシアムによる活動、環境報奨金制度)に取り組む。