今年読んだ本の中から印象に残った本を挙げる。まず、2009年発行(単行本は06年)だが、「永遠のO」(百田尚樹著、講談社文庫)を絶賛する言葉をよく聞くから読んでみた。名機・零戦がなぜ零戦と呼ばれるのか、その性能のよさを紹介し、特攻隊の人間模様や軍上層部の保身を描く。ストーリー的には主人公をヒーローに設定しなかったこと、ドキュメント風の進め方などが好きだった。
戦記や戦争中の読み物に詳しい方のなかで、資料や史実をつなぎ合わせただけ、という意見があるのも承知しているが、門外漢の私にとってはとても新鮮であり、人に薦めたい一冊である。
「永遠のO」を読んだら、百田氏のほかの著作も読みたくなった。次に読んだのは、醜い女が美容整形で美人になっていく様を描いた「モンスター」(幻冬文庫)。美容整形や風俗のことが詳しく書かれており、著者は誰から取材したのか聞きたくなるくらいだ。次に「夢を売る男」(大田出版)を読んだ。自分の本を出したいと思う人を食い物にする出版社の内幕もので、出版社と本屋の関係も興味深かった。
そして、2013年本屋大賞を受賞した「海賊とよばれた男」(講談社)。出光石油の創始者、出光佐三の生涯を描いた小説で、日章丸事件のことや関門海峡で伝馬船に軽油を積んで、漁から戻る漁船を狙い、海上で軽油を販売していたことなど、私は北九州市出身でもあり、子供のころから知っていた。著者はそれを取り上げ、エンターテイメントの小説に仕上げた。ひとつの才覚だろう。百田氏が次に何に興味を示すのか楽しみだ。
今年のベストセラーに「伝え方が9割」(佐々木圭一著、ダイヤモンド社)という本がある。著者はコピーライターだそうであり、「伝え方には技術がある」「感動的なコトバは、つくることができる」ということを著わした本だ。常に高いレベルのコピーを生み出さないといけないプロにとって、1回、1回、純白な気持から入っても、体がもたないし、たまに名コピーができたとしても、一定のレベルを継続できない。効果的な伝え方に、いくつかの法則がある。その法則、技術を紹介したもので、なるほどと思った。
最後に、「数字を追うな 統計を読め」(佐藤明彦著、日本経済新聞出版社)を紹介する。タイトルどおり、統計の読み方を紹介したものだが、優しく書かれており、説得力があり、今後の仕事に役立つと思った。断片的な数字で話を進めず、包括的な統計を踏まえなければいけないというのが印象に残った。詳しくは、本を読んで頂きたい。