商業施設新聞
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No.923

ロボットに必要な「親しみやすさ」


山田高裕

2023/9/19

 今、日本では様々なサービスロボットの導入が急速に進んでいる。2021年にすかいらーくホールディングスなどで導入が始まった、ネコ型配膳ロボット「Bella Bot」はその後様々な場所で導入が進み、今では様々な飲食店の現場でその姿を見かける。配膳ロボットといえば、という話が出るとこのロボットを思い出す人も多いようだ。

 また小売の分野でもこうした流れは進む。セブン-イレブン・ジャパンは、オフィスビルなどで店舗から注文者まで商品を配送する、配送ロボットの実証実験を行っている。バックヤードまで目を向けると、食品スーパーのカスミではネットスーパーのピッキング作業に自律型協働ロボットの導入を進めている。7月にイオンがサービスを開始したネットスーパー「Green Beans」では、専用の大規模物流施設を活用しており、その中では最大1000台のピッキングロボットが動き回り、迅速な配送を可能としている。

 こうしたサービスロボット導入の背景にある一番の理由は、やはり人手不足・人件費の増大だ。特にコロナ禍を経て、小売や外食に需要が戻ってきているにもかかわらず、コロナの影響で業界を離れた労働者は戻ってきていないという状況はよく指摘されており、今後も人手不足は深刻さが増していくと考えられている。こうした状況がある以上は、事業者はロボットの導入について積極的になっていかざるを得ないだろう。

Pudu Roboticsが日本市場に投入する清掃ロボット
Pudu Roboticsが
日本市場に投入する清掃ロボット
 しかし、コスト面だけではなかなか導入に踏み切れないところも多い。そうした中、重要になってくるのは「ロボットの親しみやすさ」だ。先述の「Bella Bot」を開発したPudu Roboticsは先日、新たに日本の清掃ロボット領域への参入を行うと発表したが、参入の背景として日本市場が有望な市場であり、それは人手不足などのコストの面だけではなく、一般の人々が広くロボットを受け入れているということを挙げていた。

 確かに同社の「Bella Bot」はネコを模したユーモラスな外見ということでメディアにもしばしば取り上げられており、来店者からも人気を集めていた。今回日本市場に投入する清掃ロボットも、ロボット前部のモニターに表情を表示する機能がついており、親しみやすさを演出している。また少し前に話題となったソフトバンクの「Pepper」も、「愛らしいキャラクター」をセールスポイントとして挙げていた。

 考えてみると、日本では国民的作品の『ドラえもん』などに代表されるように、ロボットと人間が共に暮らすというフィクションは馴染み深いものだ。そうしたフィクションを通じて浸透した概念を「親しみやすさ」という点で刺激するのは、日本においてロボットの導入を加速していく有力な起爆剤になるのかもしれない。
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