電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第541回

(株)メイコー 代表取締役社長 名屋佑一郎氏


ベトナムで車載新工場を検討
天童へ品質・生産管理を移管も

2023/9/8

(株)メイコー 代表取締役社長 名屋佑一郎氏
 大手基板メーカーの(株)メイコー(神奈川県綾瀬市)は、売上高の半分を占める車載基板をさらに拡大する。国内では久方ぶりに大型の新工場(天童工場)を立ち上げ中で、2023年秋にも稼働させる。さらに海外主要顧客に安定供給するため、ベトナムでも新たな車載専用工場を整備する。国内外で旺盛な投資を計画する同社の名屋佑一郎社長に、足元の景気や23年度下期以降の事業戦略を聞いた。

―― 足元の市況について。
 名屋 8月に公表した23年4~6月期の売上高は前年同期比4%増の416億円、営業利益は同68%減の9億円の増収減益となった。大幅な減益となったのは、取引先の1社で国内携帯電話メーカーのFCNT(株)が民事再生手続きを申請したため、貸倒引当金などを計上したことが大きい。
 車載用途はまずまずだったが、スマートフォン(スマホ)市場全体が低迷しているため、スマホ向けを中心に大きく減収となった。しかし、ハイエンドのスマホ向けは増加傾向にある。

―― 今後の市況見通しは。
 名屋 車載基板を中心に徐々に回復を見込む。スマホもハイエンド端末を中心に、多層タイプやリジッドフレキなどの高性能FPC基板の受注を強化する。4~6月期は工場の稼働率も70%程度で推移したが、下期にかけフル稼働へ引き上げる。パッケージ基板はメモリー中心のため足元は厳しい。24年以降の回復期を見据えて準備は着々と進める。EMSも成長する。ドライバーモニタリング関連の製品など、今後売上拡大が期待できる。

―― 車載基板が堅調ということですが。
 名屋 主力の車載基板は4~6月期を底に受注拡大を見込んでいる。下期以降は、国内車載市場が堅調に推移するとともに、大手の欧米系EVや重要保安部品向けを中心に新規受注が本格化するからだ。
 中長期的には車載基板の需要がより一層拡大する見通しだ。欧米系ティア1を含めて受注量の拡大が期待できるため、新たに車載の量産工場をベトナムに建設する。詳細は今後詰めるが、早ければ24年初頭に着工し、25年上期の稼働を目指す。これにより、車載基板においては日系企業の納入比率が現行の9割超から、8割程度に下がり、代わって日系以外が2割程度まで拡大するだろう。

―― 天童工場も稼働します。
 名屋 天童工場は、10月にも竣工する。国内でも久しぶりの大型工場で、まずは車載基板のマザー工場として稼働させる。敷地6万5000m²内に延べ床約2.5万m²を整備する。ADAS向けなどに対応する最新のビルドアップ基板や貫通多層板の量産を行う。基板の製造に関する自動化やプロセスの生産技術に関する機能も備える。

―― 自動化を積極的に推進していますね。
 名屋 天童も自動化を極力推進した最新鋭の工場にする。すでに当社では基板搬送などを自動化するAGVなどの装置を開発・製造したり、自動はんだ付けロボットを内製化している。最新工場ではこうした自社製造する装置を基板の生産ラインに組み込んでいく。また、装置の外販も積極的に行っている。量産はベトナムで行っており、23年度から本格化する。「品質管理や生産技術ならびに研究開発部門は、最先端のものづくりをする工場にあったほうが良い」というのが私の持論だ。現在綾瀬の本社に属するこれらスタッフは、できるだけ早く天童に移ってもらうことも検討している。スタッフは数十人規模にのぼるだろう。

―― 23年度の主な投資計画は。
 名屋 投資額は前年度を少し下回る200億円弱になるだろう。ベトナムの車載新工場は含まないが、天童や石巻第2、ベトナム第3工場など目白押しだ。石巻第2はSAP(セミアディティブプロセス)を導入する。ベトナム第3ではM(モディファイド)SAPの新ラインを導入する。

―― 中計では900億円の投資計画を予定されています。今回のベトナム新工場でさらに上積みするのですか。
 名屋 総枠は変えないつもりだ。市況を見ながら適宜判断するが、現在パッケージ基板への投資を先送りして、車載基板に注力する。特に海外顧客への販路拡大を図るため、供給体制を強化する必要がある。

(聞き手・特別編集委員 野村和広)
本紙2023年9月7日号6面 掲載

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