(株)弘輝テック(埼玉県川越市)は、自動はんだ付け装置を中心に新型N2(窒素)リフロー炉など各種はんだ付け装置を展開する。2022年にはダイナトロン(株)(東京都北区)と資本提携し、同社グループ傘下となった。基板用CAMソフト大手のダイナトロンとの相乗効果を狙う。弘輝テックで、新製品開発などの陣頭指揮を執る専務取締役の小澤直行氏に足元の事業環境や今後のビジネス展開を聞いた。
―― 会社紹介からお願いします。
小澤 1985年に基板向けのはんだ付け装置の専門メーカーとして設立された。2016年にはさいたま市から現在の本社機能がある川越市に移転した。従業員は45人にのぼり、大半が装置設計などを担うエンジニア集団である。名古屋や大阪にも設計人員を擁している。
―― 現在の主力製品について。
小澤 局所的なはんだ付けが可能なセレクティブ自動はんだ付け装置が主力製品となっている。試作や小・中ロット生産に対応しやすい卓上/オールインワンタイプから、量産向けのインライン「SELBO」(セルボ)モデルを顧客ニーズに合わせてラインアップしている。セルボは、ライン構成に応じて増設しやすく柔軟に生産能力に対応できる。
特に19年に発売したインラインタイプのセルボⅡは、国内外でEV向け実装基板を手がける量産ライン向けに出荷が本格化している。卓上型は09年に発売して以来、世界で累計800台以上、インラインは250台以上が販売された当社の大ヒット製品である。いずれも業界デファクト製品と自負している。
―― 足元の受注環境を教えて下さい。
小澤 好調に推移している。特に前期(23年4月)は、半導体など電子部品不足も徐々に解消し、新型コロナ収束を踏まえた自動車関連などの生産回復に支えられ、国内外の顧客から旺盛な需要があり、過去最高の売上高となった。足元では依然、装置出荷が好調で24年4月期は前期比2割の増収を目指す。
23年秋にはインラインタイプのセルボⅢを市場投入する。SMTラインと同様に生産変動に応じた連結が自由自在となり、これまでよりも使い勝手が格段に向上する。今後は、欧州をはじめ、米国やアジアなどでの需要拡大を見込んでおり販促活動を強化する。
―― 海外市場の開拓に向けた取り組みをお聞かせ下さい。
小澤 グループ企業を通じて中国・上海/深センではすでに販売・サービス拠点がある。韓国やベトナム、台湾、マレーシアなど各地に進出済みだ。また直営としては22年にタイにも販促やアフターケアなどのサービス拠点を開設した。今後、インドでの開設も検討する。欧州では専門商社と連携しながら事業拡大を図りたい。
―― 窒素リフロー炉にも再参入したとお聞きしました。
小澤 環境意識の高まりもあって新たな窒素リフロー炉「VFRシリーズ」を開発、23年に入り販売を開始した。特殊な遠赤外線加熱パネルヒーターと特殊なフィルターを搭載しており、炉内の汚れを激減させた次世代のリフロー炉となる。炉内のミスト付着もなく、炉内フラックス汚れを最小限に抑えて、装置のメンテナンス期間を大幅に抑制できる。当社の試算では3年に一度のクリーニングで済むデータも出てきており、従来型のリフロー炉よりも大幅にメンテナンスコストを削減できる。主要技術においてはすでに特許出願も済ませている。
実装基板メーカーの間では、鉛フリーはんだ対応の専用リフロー炉を00~05年に各社相次いで導入しており、20年前後経つことからこれが現在入れ替え時期にきている。このタイミングで、当社の新型リフロー炉の販促を図っていく。また、同装置は部品の耐熱温度条件に基づいた最適な測定ポイントを自動生成できる熱解析ソフトも利用できる。
―― 今後の事業計画について。
小澤 競争力のある装置開発をさらに推進し、親会社のダイナトロンとの相乗効果を発揮して、26年4月期には連結売上高をグループで現行の2倍強にあたる50億円まで引き上げたい。ダイナトロンは、基板用CAMソフトではシェアナンバーワンの実績があり、こうしたソフト・ハード面から顧客ニーズに最適な製品開発を継続していく。
(聞き手・特別編集委員 野村和広)
本紙2023年8月31日号5面 掲載