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第394回

(株)SHIBUYA109エンタテイメント 運営事業部 SHIBUYA109渋谷店総支配人 丸山康太氏


ファッションとエンタメを共存へ
SNSに注力、MD検討にも活用

2023/8/22

(株)SHIBUYA109エンタテイメント 運営事業部 SHIBUYA109渋谷店総支配人 丸山康太氏
 (株)SHIBUYA109エンタテイメント(東京都渋谷区)が運営する「SHIBUYA109渋谷店」は、売り上げがコロナ前(2019年度)と同等水準まで回復しており好調だ。近年はエンタメコンテンツとのタイアップにより若者の熱視線を集めている。一方、2月からはファッションフロアを順次リニューアルするなど、ファッションビルとしての勢いも健在だ。同社運営事業部 SHIBUYA109渋谷店総支配人の丸山康太氏に聞いた。

―― SHIBUYA109渋谷店をリニューアルしました。手応えは。
SHIBUYA109の建物は渋谷の街のシンボルとなっている (C) SHIBUYA109ENTERTAINMEN
SHIBUYA109の建物は渋谷の街の
シンボルとなっている
(C) SHIBUYA109ENTERTAINMEN
 丸山 19年以来のリニューアルにより、ファッションのてこ入れを実施した。コロナ禍でも売り上げが立っていた店舗を大型化したほか、「epine」「OLIVE des OLIVE」などが新しくオープンした。また、8階には業務提携しているMeta(旧Facebook)と共同で「Creator Collaboration Space」をオープンした。
 リニューアルによって館の鮮度が上がり、以前にも増して多くの方に足を運んでいただけるようになった。特にエンタメコンテンツとのコラボイベントのついで買いも増え、買い上げ率や客単価も上がっている。また、ファッションの感度を高めたことで、年齢層を10代前半から20歳前後へと引き上げることができた。

―― 近年はエンタメコンテンツとのコラボが話題になっています。
 丸山 10代の推し活・オタ活マインドが高まりを見せた13年ごろからエンタメコンテンツとのコラボに力を入れている。若者にとってファッションとエンタメは切っても切り離せないもの。109ブームのころはファッションに特化していても良かったが、好みや価値観が多様化・細分化している現代では、ファッション以外も取り込んでいかないと若者に相手にされなくなる。そういった思いから始動した。地道に実績を重ね、今ではSHIBUYA109の強みとなっている。
 タイアップがトリガーとなり、初めて、あるいは久々に109に来館していただく方も多い。そういった中でファッションの感度も高めていけば、買い回りが促進されるだろう。このように、エンタメをさらに強化するとともにファッションの感度を高めることで、ファッションとエンタメの魅力が共存した商業施設としていきたい。

―― エンタメコンテンツとのコラボにあたって意識していることは。
 丸山 リアルの空間でコンテンツの世界観に浸りながらグッズを買える、という体験を提供できるのは商業施設だからこそ。エンタメコンテンツを発信するポップアップスペース「DISP!!!」(ディスプ)では、空間全体でファンが喜ぶ様々な仕掛けを施している。私はディスプを、その場所でしか味わえない体験も提供する「コト消費」型店舗だと捉えている。

―― 地下2階の食フロアには最旬のスイーツなどが並びます。
 丸山 スイーツブームを捉えて19年にオープンした「MOG MOG STAND」(モグモグスタンド)は非常に集客力が高く、19年に入館者数が過去最高を記録した一因だと思っている。エンタメコンテンツとコラボすることもあり、6月には「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」とのキャンペーンを実施した。モグモグスタンドはSHIBUYA109渋谷店においてお客様が滞留できる場所になっていると思う。

―― リサーチ・マーケティングについては。
 丸山 ファッションとエンタメを共存させるためにもZ世代のマーケティングを強化している。特にSNSでの発信・分析には力を入れており、本社の「SHIBUYA109 lab.」と渋谷店のSNSリサーチチームが連携して運営している。109の情報だけでなく、Z世代が知りたいメイク・ファッションのトレンドや他の商業施設の面白い新店なども発信し、アカウントのファンを増やしてフォロワーを獲得している。そして、投稿にどれくらいの反応があったかの分析も行う。また、SNSでSHIBUYA109と親和性の高いブランドを見つけ出すなど、リーシングやMD構成の検討にもSNSを活用している。

―― 今後の抱負を。
 丸山 おかげさまでポップアップ出店の引き合いが強く、今は枠を調整しながら順番に出店していただいている状況だ。コロナ禍では空き区画を埋めるようにポップアップを企画してきたが、今後は戦略的にポップアップを回し、入れ替わりの早い若者のトレンドに対応できる施設としたい。
 24年にはSHIBUYA109は45周年を迎える。19年の40周年以降、20~22年はコロナで苦しい状況が続いた。その穴を埋めるためにも、45周年で新しいことに取り組む予定だ。開業40周年にあたる19年には過去最高入館者を更新したが、それをさらに上回りたい。

(聞き手・本紙編集部)
商業施設新聞2508号(2023年8月15日)(2面)

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