電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第543回

車載や省エネルギーがキーワードのルネサス、富士電機、三菱の業績は今や絶好調!


シリコンウエハーの大型投資は外国半導体を呼び込む狙いもあるのだ

2023/8/10

 日本列島は猛暑に喘いでいるが、この夏に来てウハウハになっている企業も数多いのである。それらは、みな時代のキーワードであるSDGs革命にマッチングした事業展開を行っている。すなわち、EVであり、省エネルギーエアコンであり、日本勢が今後進めていく方向性の正しさを証明しているのだ。

 ルネサス エレクトロニクスの1~6月期の純利益率は何と27%であり、純利益額は1958億円を上げ、前年同期比77%増とサプライズの内容となっている。車載向けに高単価な半導体が伸びており、採算性が非常に良くなっている。もちろん為替の円安も追い風にはなっており、秋以降も見通しがいい、と言われているのだ。

 三菱電機の4~6月期の純利益率は5%、純利益額は578億円であり、これまた前年同期比73%増という好調さを維持している。省エネルギー性能の高いヒートポンプ空調の引き合いは強く、パワーチップも堅調に拡大すると見られ、高水準の業績が期待できるので、半導体投資の強化に動いている。

 富士電機の24年3月期の純利益は前年比5%増の645億円が予想され、4期連続で過去最高を見込んでいた従来予想をさらに上回ってくる勢いである。当然のことながら、EVの拡大が急速であり、同社のパワー半導体も活況を呈している。売上は5%増の予想で、ついに大台の1兆600億円と過去最高を見込むのだ。

 パワー半導体向けのウエハーの大型投資も出てきている。住友電工は300億円を投じ兵庫県の既存工場内に新ラインを設けるなどの一気増強に出る構えだ。EV向けに必要なパワー半導体のSiCウエハーの一大量産体制を構築するのだ。

 信越化学グループの三益半導体工業も770億円を投じ300mmウエハーの新工場用地取得に動きだした。こうなれば、最大手の信越化学工業がいつ巨大投資をアナウンスするかであろう。すでに発表されているとおり、シリコンウエハーの大手であるSUMCOもまた、佐賀県伊万里と吉野ヶ里に2250億円を投入し最先端の新工場を建設する。

日本政府は半導体および材料産業にも手厚い補助を宣言(西村経産相)
日本政府は半導体および材料産業にも
手厚い補助を宣言(西村経産相)
 とまれこうまれ、省エネルギー半導体とその材料に関する投資の流れからは当面、目を離せそうもないのだ。また、こうした動きに日本政府は手厚い補助金を手配してもらいたいと、切に願っている昨今である。

 何故ならば、材料に強い日本企業の国内投資が、有力な外国系半導体企業の多くを日本列島に呼び込む起爆剤になるからである。TSMC熊本は日本に第一工場、第二工場を設ける意思を表明しており、台湾のパワーチップも日本進出を発表、さらに韓国勢も日本に開発および量産拠点を設ける構えであり、その最大の理由は「装置と材料の国ニッポン」にあるからである。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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