商業施設新聞
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第390回

イオンモール(株) CX創造本部アウトレット事業部長 吉野直樹氏


地域・エンタメなどで独自性
レイクタウンアウトレットを増床

2023/7/25

イオンモール(株) CX創造本部アウトレット事業部長 吉野直樹氏
 イオンモール(株)は2018年4月に「THE OUTLETS」(ジ アウトレット)シリーズとして「HIROSHIMA」(以下広島)開業を皮切りに、22年4月に「KITAKYUSHU」(同北九州)、そして23年4月「SHONAN HIRATSUKA」(同平塚)を開業した。これに加え、「イオンレイクタウンアウトレット」も展開している。CX創造本部アウトレット事業部長の吉野直樹氏に事業の動向を聞いた。

―― 20~21年のコロナ禍と、足元の状況から。
 吉野 アパレルは苦戦したが、スポーツとアウトドアは順調で、現在も好調だ。コロナ禍という環境の中でスポーツに目覚めた人が多い印象だ。足元はアパレルの回復は鈍いが、飲食、アミューズメントなどの体験型消費は堅調だ。売り上げはコロナ前には戻っていないが、来店客数はコロナ前を上回っている。
 一方で、百貨店などプロパーの業種が好調なため、アウトレットに商品が入らず、在庫不足になりやすいという課題が出てきている。

―― ジ アウトレットは大手と異なりますね。
 吉野 「アウトレット」に加え、「エンターテインメント」「地域との出会い」がコンセプト。アウトレット業界は大手2社が8割を独占するが、当社はそこに追随するのではなく、これまで地域で培ってきたノウハウを活かし、アウトレット事業を核とした地域創生型事業で強みを出す。
 各施設のポジションとして、横軸に郊外立地から駅前立地、縦軸にレジャー型から都市型で分類すると、広島は郊外立地でレジャー型、北九州が駅前立地でレジャー型、平塚が郊外立地で都市型。レイクタウンアウトレットは駅前立地で都市型となる。4つの出店立地それぞれに合わせてコンテンツを変えている。

―― 各施設の特徴は。
 吉野 広島は2階がアウトレット、1階は食品SMのイオンが出店するプロパーとのハイブリッド型で、大型アミューズ施設やシネコン、カーディーラー、音楽教室併設の楽器店など体験型とした。観光で立ち寄っていだけるよう、地域の食の集積や地場産品など広島の文化発信も行っている。スポーツMDの充実を狙い、21年4月に増床した。

―― 北九州は。
 吉野 大型アミューズメント施設のほかに、スカッシュやドローン教室もあり、体験型エンターテインメントを充実させている。隣にイオンモール八幡東があり、ある意味でハイブリッド型。レジャー的な使い方をされるお客様はアウトレット側の駐車場に停めてアウトレットを利用する。また、アウトレットで楽しんで、最後はイオンで食品を購入されるお客様はイオンモール側に駐車する傾向にある。

―― 開業から1年。手応えはどうでしょうか。
 吉野 悪くはないが、関東とは反応が違う。それは足元人口の厚みによる。平塚はデイリーユースでもうまくいくが、北九州は同じコンセプトでは計画を下回っていただろう。レジャー型としたことが奏功した。

―― ではその平塚は。
 吉野 関東は競争環境が厳しく、他社との差異化で体験型と地域を軸にデイリーを意識した。大型家電やダイソー、生鮮三品専門店を誘致し、7月にはクリニックモールが開業する。またアウトドアを中心とした体験型要素をテナントとつくった。さらに、地元クラブの湘南ベルマーレとフットサルコートを整備した。

―― 開業後は。
 吉野 数字自体は順調だ。想定よりもペット連れのお客様が多い。足元人口が厚く、車でも短時間で来館できるのが理由ではないか。施設内の環境デザインに力を注ぎ、ペットを連れて散歩したくなる環境を意識した。お客様の期待に応えられた証左だろう。
 コロナで最も苦しかった時に、アンケートを実施したが、アウトレットに行かなくなった一番の理由が、「外出機会や人と会うことが減って、いい衣服を買う必要がなくなった」だった。単に憧れのブランドがお値打ち価格で買えるより、出かけたくなる場所の1つに選んでいただけたらとの思いで、緑溢れる開放的公園の中にアウトレットがあるイメージとした。

―― レイクタウンアウトレットを増床します。
 吉野 40店を増加し、計160店の体制で24年春にオープンする。

―― ジ アウトレットとブランドの統一は。
 吉野 現時点では考えていない。ジ アウトレットよりも、「KAZE」「MORI」「アウトレット」という3館のバランスがいい。加えてアウトレットの規模が小さい。11年4月の開業から、順調に固定客もつきブランドからの支持も高まり、手狭になった。KAZE、MORIはエンターテインメント性もあり圧倒的な集客力と売り上げを誇る。このため、アパレル、雑貨、スポーツといった人気ブランドを揃えシンプルに物販中心のアウトレットの王道を追求する。

―― 新規計画は。
 吉野 現時点で次の計画はない。当社は開発を進める中で、そのマーケットを様々な角度から検証し、その上でアウトレットが最適となればアウトレットとなる。既存施設の増床については北九州も平塚も増床は可能な設計にしている。

―― 市場性は。
 吉野 あると思うが、テナントが難しい。ブランドはアウトレットを本業とは考えていないし、なかにはブランド棄損を懸念するところもある。プロパー店舗を増やしたり、プロパーの営業力を強めるのが第一で、プロパー店舗10店に対して、アウトレット1店という割合。増床は多いが、大手も新施設は10年間なかった。

―― アウトドアブランドはアウトレットに出店することへの抵抗感は。
 吉野 平塚に関しては、スノーピークにテント張り体験や焚火体験などオープンモールだからこそできる環境を提案した。そこに魅力を感じて出店いただいた。

―― 今後の抱負を。
 吉野 お客様との距離が近いデベロッパーの私たちだから可能となるイオンモール独自のアウトレット像を目指したい。

(聞き手・特別編集委員 松本顕介)
商業施設新聞2504号(2023年7月18日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.411

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