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Report8

北播磨総合医療センター開院、神戸大と連携し高度急性期病院が誕生


4疾病対応と救急・小児・周産期医療を備えるマグネットホスピタルへ

2013/10/8

北播磨総合医療センター外観
北播磨総合医療センター外観
 北播磨総合医療センター企業団(兵庫県小野市市場町926-250、Tel.0794-88-8800)は、兵庫県の三木市、小野市の2市民病院を統合した新病院「北播磨総合医療センター」(450床、31科)を10月1日に開院した。これに先がけ、9月14~16日に地元住民ら一般者の見学会を実施し、約1万人が新病院に訪れた。新病院の外来患者数は1日1000人(平均)を見込んでいる。
 同企業団は三木市、小野市をメンバーとする一部事務組合で、2つの市民病院を統合することを目的に、2010年1月に設立された。この計画立案の契機は、北播磨圏域の公立病院に医師を派遣している神戸大学医学部からの統合提案(07年5月)によるもの。背景には、医師不足問題などが挙げられる。全国でも例を見ない、大学と行政との連携による病院建設という先駆的な取り組みとなった。
 新病院の所在地は、小野市市場町926-250の県が推進する「小野長寿の郷構想」区域内で、この玄関口にあたる国道175号線沿いの約8万6000m²。建物は、免震構造による7階塔屋2階建て延べ3万8000m²の規模で、8月末に竣工した。建物のデザインは、周辺の森林を活かし、建物内にいても患者が緑の自然を感じられる設計とした。天窓のほか、病室の窓も腰から下の位置まで広くとり大型の窓ガラスを採用するなど、明るく開放的な空間を演出している。また、日差しが直接人に当たらないように庇部分を長く設置するなど工夫が見られる。太陽光発電設備も導入した。
 建物1階中央部の正面玄関を抜けたロビーには、自動支払機、再診受付、総合案内を配置したほかショップやATM、レストランを集積し、利便性を高めた。1階西側には、外来診察室を配置。大きく4つのエリアに空間を区分し、その間に待合を設置して各診療室の前で待機できるようにした。さらに、区分した空間の中にも中央に廊下を確保しており、スタッフ専用の動線を設け、患者との動線を分けてスムーズな対応を可能にした。
 フロア奥には、核医学検査室、採血採尿室、中央処置室、生理検査室、ドック・検診室を配置し、その奥に放射線治療室、内視鏡検査室、放射線検査、CT・MRI検査室などの検査部門を集約した。CT・MRI検査室に近く、救急外来口と接続する東側奥には、ER救急病棟10床と救急外来を設置し、同じフロア内で1次・2次緊急から2.5次救急などに対応が可能となっている。ER救急病棟内には一般患者と分離したエレベーターを設置しており、3階のHCUやICUとの動線を確保している。2階の西側には、1階と同様に外来診療室を配置しているほか、東側には、中央処置室、化学療法室、リハビリ庭園を設置したリハビリテーション施設を配置。2階奥は大きくスタッフエリアを設け、スタッフが働く環境の充実を図っている。
 3階は、中央のエレベーターに隣接し、手術室(7室)をメーンに設けた。血管造影室を取り巻くように、ハイブリッド手術室(1室)や1階の救急部門との動線を確保した東側に、ICU・HCUを配置している。このほか、日当たりの良い南側に緩和ケア病棟を集約し、周辺に屋上庭園を設けるなど、やすらぎある療養環境を実現している。
 4~7階には一般病棟を配置。各フロアは、中央にエレベーター、スタッフエリア、デイルームを設け、病室はこれを境に東西に分けた。東西それぞれの中にも中央にスタッフステーションを設けており、病室への見通しを重視し素早い対応を可能にしている。4階の産科病棟では、スタッフエリアに近い病室に、陣痛分娩室(LDR)を3室配置、陣痛から分娩、産後の回復まで移動なく同じ部屋で過ごすことができる。また、同フロアにこども病棟を設けており、壁やガラスには作家の絵など、こどもの気持ちをなごませる仕掛けを施している。7階上の展望階では、憩いの場として全面ガラス窓の展望ホールを設置しており、天気の良い日には明石海峡大橋を望むこともできる。屋上にはヘリポートを完備し、兵庫県が運行するヘリコプター(全長13m)のほか、大型ヘリコプター(全長17m)の離陸にも対応している。
 新病院は、医療機能として4疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病)対策に加え、救急医療、小児医療、周産期医療の充実を掲げ、播磨圏域(中でも南地域)に安心、安全の医療を提供する。地域で完結する医療を行い、マグネットホスピタルを目指す。
3階に設置したバイプレーン血管造影装置
3階に設置したバイプレーン血管造影装置
 医療機器は、北播磨で初導入となるPET-CTをはじめ、バイブレーン血管造影装置、MRI(新規3.0テスラ、既存1.5テスラ)、リニアックなどの最新の医療機器を揃え、4疾病に対応する。
 神戸大学医学部との連携もさらに深まっており、病理診断時に画像を迅速に送るシステムなども導入している。
 診療科は、2市民病院に無かった放射線治療科、呼吸器外科、病理診断科、歯科口腔外科を加え、開院時30科体制となる。産科は、医師の着任時期が遅れているため14年1月からの診療開始となる。病床数は、一般病床450床(ICU 10床、HCU 20床、救急10床、緩和ケア20床、人間ドック5床)で、個室は全体の約30%となる。開院時は340床程度を供用開始し、16年度に450床の全供用開始を行う予定だ。
 なお、設計および施工管理業務は日建設計、施工は竹中工務店、電気設備はきんでん、機械設備高砂熱学工業が担当した。総事業費は約200億円。
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