電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第531回

IT革命がサミットの議題になった2000年の半導体は2000億ドル


いまや約3倍増の世界市場、望まれるニッポン半導体の明日へのロードマップ

2023/5/19

NEDIAはいつだって多くの人たちを結集している!
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結集している!
 日本電子デバイス産業協会(NEDIA)の前身となる日本半導体ベンチャー協会(JASVA)は、2000年のITバブルの年に誕生した。この年は、世界半導体が2000億ドルの大台に乗ったことで大騒ぎされたのであるが、いまや世界の半導体産業はこの3倍となる約6000億ドルに乗せていくのであるからして、これを予測できた人は少なかっただろう。

 2000年における半導体設備投資も、史上最高の530億ドルが投入されたが、日本勢の設備投資は国内33社合計で1兆6000億円を投入し、国別で世界トップとなり、なんとしても復権を図るという強い意志が表れていた。残念ながら、その後のニッポン半導体は、20年以上もの歳月にわたり、敗走に次ぐ敗走を重ねていく。2022年段階においては、ニッポン半導体企業の世界におけるシェアは8.5%くらいであり、その存在感はとてつもなく薄いものになった。

 2021年における半導体の国別市場シェアは、1位米国50%、2位韓国22%、3位台湾9%、4位が日本および欧州で各6%、5位は中国4%となっている。2000年当時には、IT革命がサミットの議題になったほどであるが、パソコンであっても、スマホであっても、液晶テレビであっても、はたまたデータセンターであっても、このビッグウェーブに日本企業はとうとう乗り切れなかった。ここに来て、もう後には引けない状況で、国家戦略プロジェクトカンパニーとも言うべき「ラピダス」が登場してきたことは、時代の必然だと言えるだろう。

 ちなみに、2000年の3月27日、ロシア大統領選挙で、大統領代行だったウラジミール・プーチン氏が当選した。プーチン氏の国際舞台への初登場であるが、この時点で狂乱とも言うべきロシア・ウクライナ戦争の主役になるとは、誰もが思わなかったのだ。

 IT革命の時代には惨敗を喫した日本企業であったが、ここに来て、明日にかける虹の架け橋は確実に見えてきた。その最大のものは、やはり国家戦略カンパニー「ラピダス」の登場である。総額5兆円とも10兆円とも言われる巨大投資を断行し、北海道千歳にどでかい半導体工場を建設するという政府の意気込みは、確かに素晴らしい。

 しかして、半導体産業が世界を動かす巨大産業であることや、ニッポン半導体が復興しない限り、我が国の将来はないという世論づくりについては、政府は果たして成功しているのであろうか。世界各国においては、あらゆる半導体工場の着工式に、国王が、はたまた総理大臣が、はたまた大統領がほとんどと言ってよいくらい出席するにも関わらず、我が国を代表するトップは、そこに姿を見せない。もし天皇陛下が日本国内の半導体の大型工場の着工式に姿をお見せになれば、それはニュースとなって駆け巡り、日本国民は、いかに半導体産業が重要であるかを認識するだろう。まったくもって努力が足りない、としか言いようがない。

 それはともかく、ラピダスの掲げる目標は、ひたすらカスタマイズ半導体、ひたすら多品種少量の半導体、ひたすら専門化された半導体の構図を考えている。そしてもっともっと重要なことは、徹底的な低消費電力の半導体設計と、半導体プロセスを確立してみせるとの気構えを見せている。しかしそれだけ素晴らしいグローバルニッチトップを狙う戦略であっても、出口がないじゃないか、という声がある。それはまったくもって間違っている。

 日本企業が世界シェアの40%以上を握る自動車産業の未来像に答えはある。九州シリコンアイランドにしても、仙台、岩手エリアの東北シリコンロードにしても、自動車と半導体がクロスオーバーする世界唯一のエリアなのである。この運動論をしっかりやっていけば、必ずやニッポン半導体産業が七色の光を放つ時がやってくる。

 そしてまた、半導体デバイスでどんなに頑張っても、15~20%の世界シェアを獲るのが精いっぱいという見通しであっても、世界シェアの60%以上を握るニッポン半導体材料、同じく世界トップシェアを争うニッポン半導体装置産業があることは非常に重要だ。さらに加えて、半導体デバイスのほぼ半分にあたる一般電子部品35兆円のうち、日本企業が握るマーケットシェアは世界トップであることをしっかりと認識し、日本の総力を挙げて、メタバース革命の時代を戦ってもらいたいと心から切に思う次第である。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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