商業施設新聞
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
No.905

長距離移動のお供はミステリー


新井谷千恵子

2023/5/16

 商業施設新聞の編集部に配属となり、もうすぐで4年が経つ。最初は全く違う部署から編集部に配属ということで大変驚き、「新聞をほぼ読まなかった自分なんかが大丈夫なんだろうか?」と不安になっていたものだ。それが気が付けば4年が経とうとしている。あっという間に日々が過ぎ去っていくその様は、まさしく光陰矢の如しだ。

 記者という仕事について、自分的に最も大きな特徴だと思うのが“移動が多い”ことだ。もちろん文章を書いたりするのも特徴だろうが、それよりも様々な場所に足を運んで話を聞いたりすることの方が重要な気がする。移動が多いときは、東西南北、県を跨いで移動することはざらにあり、じっくり腰を据えて原稿を書きたいのに書けない、なんてこともよくある。先輩記者には海外まで取材に行く人もいるくらいで、兎にも角にも移動が多いというのがこの職業の特色の一つなのではないだろうか。

 さて、そんな移動が多い中、どのようにして時間を過ごしているのか。例えば電車で1時間半かかる場所に行くとき、人生の貴重な1時間半をどのようにして有意義に過ごしているのか。前までは音楽を聴きながらスマートフォンを見て、化粧品のレビューを探したり、時にはSNSを見て時間をつぶしていた。しかしこれは、自覚もしているのだが、個人的には全く有意義ではない時間の使い方だと思っていた。1時間半が過ぎた後に残るものは少なく、なんとなくネットを見て終わったということになるからだ。

 そんな中、最近の筆者はというと、もっぱらミステリー小説を読んで時間をつぶすことが多い。22年秋にもミステリー小説にハマっているというコラムを執筆したが、ここ最近はまたその波が来ているのだ。読んでいるのはもっぱら綾辻行人先生の作品で、有名な館シリーズを読破したいと考えて読み進めている。『水車館の殺人』『人形館の殺人』『時計館の殺人』『黒猫館の殺人』を読み終え、やっと『暗黒館の殺人』にまでたどり着いた。なぜか『迷路館の殺人』だけは22年末くらいに先に読んでいたのが不思議であるが、まあいい。とにかく綾辻先生の作品は面白いのだ。

22年11月にグランドオープンした恵比寿ガーデンプレイスには「TSUTAYA BOOKSTORE」も出店しており、本好きも嬉しい施設となっている
22年11月にグランドオープンした
恵比寿ガーデンプレイスには
「TSUTAYA BOOKSTORE」も出店しており、
本好きも嬉しい施設となっている
 そんなこんなで、今はとても有意義な移動時間を過ごせている。本というのは不思議なもので、表紙を開いて文字を読み進めていくうちに、その世界に入り込んだ気分になれる。誰かの人生を覗き見たり、どこか遠い世界に旅行しているような体験をしているとも言える。そんな体験ができているからか、前よりも長い移動時間を楽しめていると思う。

 蛇足になるが、本を読むようになると、とにかく街に書店が少ないのが気にかかる。1駅に1店くらいは欲しいが、昨今の出版業界の厳しさを考えるとそれは難しいのだろう。新しく開業した商業施設でも、書店が入っていない施設が増えてきている。そんな状況に少し寂しさを感じつつ、少しでも業界の興隆につながればと考え、筆者はまたリアル書店に足を運ぶのだった。
サイト内検索