電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第522回

ダイトロン(株) 代表取締役社長 土屋伸介氏


SiC加工装置など開発強化
ソフトとハードの一貫も志向

2023/4/21

ダイトロン(株) 代表取締役社長 土屋伸介氏
 メーカーと商社機能を併せ持ち、「製販融合」を標榜するダイトロン(株)(大阪市淀川区)は、2022年12月期に過去最高の業績を更新した。21~23年にかけての中期経営計画は最終年を迎える。4月1日付でCOOに加え、CEOにも就任した代表取締役社長の土屋伸介氏に話を伺った。

―― 好調が続いています。
 土屋 業界全体の影響を受けて当社も好調だった。22年12月期は売上高が前期比21%増の876億円、営業利益が同44%増の61億円となり、いずれも過去最高だった。電子機器および部品と製造装置のどちらも取り扱っていることがさらなる好調の要因となったと考える。また、当社のベースとなる商社機能で要望を伺い、メーカー機能で技術的な提案ができることもクイックな対応につながった。ネットワークを活用して部品調達難に対応できたことも大きい。

―― 足元の状況はいかがですか。
 土屋 電子機器及び部品事業は、半導体メモリーの在庫調整の影響を大きく受けている。しかし、製造装置事業においては設備関連の顧客が先を見越した投資を継続しており、好調を維持している。また、パワーデバイス関連は底堅い需要がある。そのため全体としては受注が落ちてきているが、それらによりカバーしている。

―― 23年12月期の見通しはいかがですか。
 土屋 売上高を22年12月期比微増の880億円、営業利益を同5%減の57億円と計画している。半導体メモリーの在庫調整が秋ごろまで続くと見込んでいるが、24年には回復に向かうとみている。SiCパワーデバイス関連などは継続して投資が行われており、受注残も多数あるため、売り上げは横ばいを維持できる見込みだ。一方、人材投資や海外活動を強化していくため、販管費増加により、営業利益は少し落ち込みを予想する。

―― 受注残の増加が続いています。
 土屋 受注残への対応としては、調達をスムーズにするため協力会社を増やすなど、連携を強化して対応している。また、中部工場を起点に、国内の既存工場の効率アップを図っている。当社の現状では、現在の約半分ほどの受注残が適正だ。需要の落ち着きと生産強化により、23年12月期から減少する見込みだ。

―― 23年から役員体制を変更されました。
 土屋 グループ経営の強化と世代交代を目的としている。新しい発想に期待しており、次期の中期経営計画も、新しい経営体制で検討していく。

―― 次期中期経営計画での主な取り組みは。
 土屋 詳細は検討中だが、オリジナル製品の強化、海外ネットワークの拡充を掲げる予定だ。

―― オリジナル製品については。
 土屋 現在のオリジナル製品の比率は全体のうち約16%。23年12月期には25%を目指している。拡販に加え、開発を強化する。収益率を上げるため、特殊な領域を狙っていく。現在は海洋機器向けコネクターや新技術でのSiC加工装置などを開発中で、装置については23年内に販売を開始する。また、通信市場の広がりに対応する光半導体の加工装置も市場投入予定だ。

―― 海外ネットワークの拡充については。
 土屋 これまでなかった欧州の拠点として、オランダで拠点を設立し事業を開始した。また、北米と中国における販売ネットワークの強化、新たな市場としてインドへの展開も検討する。東南アジアでの新工場建設も検討していく。

―― そのほか注力分野はありますか。
 土屋 23年12月期は、売上高のうち電子機器及び部品事業65%、製造装置事業30%、新規事業5%の割合を目標とする。新規事業は現状データセンター向けの無停電電源装置が占めており、今後伸ばしていく計画だ。
 また、ソフトウエアビジネスに注力していく。画像機器向けなど電子部品と結び付けて使用できるものを想定し、次期中計で具体化させたい。ソフトウエアに関しても自社開発と既製品購入を組み合わせることで、ソフト・ハード、商社・メーカー、あらゆる角度から製品提供できるようにする。将来的には50億~100億円の事業規模を目指している。


(聞き手・副編集長 中村剛/日下千穂記者)
本紙2023年4月20日号10面 掲載

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