商業施設新聞
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No.902

インバウンド復活へ明るい兆し


若山智令

2023/4/11

 観光庁から、2022年の訪日外国人消費動向調査が発表され、22年の訪日外国人旅行消費額は8987億円(試算値、19年比81.3%減)、訪日外国人(一般客)1人あたり旅行支出は23万5000円(同47.9%増)だった。全体の消費額はコロナ禍直前の19年にはほど遠いが、1人あたりの支出は19年を上回るという結果になった。

 22年の消費額を費用別に見ると、宿泊費が最も高く34.2%、次いで買い物代が26.3%、飲食費が22.6%であった。19年は買い物代が34.7%、宿泊費が29.4%、飲食費が21.6%だったため、買い物代が減り、宿泊費や飲食費が増えたことが分かる。外国人が日本でたくさんモノを買う、いわゆる「爆買い」がよく見られたのは16年前後までで、それ以降は買い物目的から、レジャー・観光目的が徐々に増えている。

 また、国籍・地域別の訪日外国人旅行消費額と構成比も少し変化があった。19年の訪日外国人旅行消費額は4兆8135億円で、構成比トップ5は1位が中国(36.8%)、2位が台湾(11.5%)、3位が韓国(8.8%)、4位が香港(7.3%)、5位が米国(6.7%)だったのに対し、22年は1位が韓国(15.0%)、2位が中国(12.1%)、3位が米国(10.7%)、4位が香港(8.5%)、5位が台湾(8.4%)となり、トップ5の顔ぶれは変わらないものの、構成比では3分の1以上を占めていた中国が下がり、相対的に他の国が増加した。

観光地は外国人を含め多くの人で賑わっている(22年12月撮影)
観光地は外国人を含め多くの人で賑わっている(22年12月撮影)
 直近で発表があった、23年1月の国籍(出身地)別外国人延べ宿泊者数を見ると、トップは韓国(21.7%)、次いで台湾(15.8%)、香港(10.6%)、米国(7.9%)、中国(5.9%)となっており、中国は19年1月比で87.0%減と大きく減っている。

 先日、ホテル業界に詳しい専門家に話を聞く機会があったのだが、そこで話していたのは「日本のインバウンドが完全に復活するのは、やはり中国人旅行客が戻ってからだろう」というものだった。たしかに、19年の中国人旅行客全体で1.7兆円もの金額を日本で消費しており、これは22年の年間の訪日外国人旅行消費額を上回る。やはり中国人の戻りなくして日本のインバウンドの完全回復には至らない。カギは中国にある。

 そんな中、日本政府は22年10月に水際対策を緩和。23年3月には中国からの入国者に対する水際対策も緩和され、3月以降は中国からの航空便も増便された。夏以降はさらに日中便が大幅増便される見通しで、中国人旅行客の増加が見込まれている。中国側もこの春には団体旅行の解禁を認める方向であるため、コロナ前に見られた光景が再びやってくる。

 コロナの影響で大きな打撃を受けた観光業界だが、その影響も落ち着きつつある。そしてインバウンドの急激な回復により、23年からはかつての活気を取り戻していけそうだ。
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