電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第524回

東日本大震災メモリアルの3月11日に仙台に出かけて感じたこと!!


東日運送の半導体装置専用トレーラーは28台完備でトップクラス

2023/3/24

 東日本大震災の起きた2011年3月11日は、とても肌寒い日であったことを覚えている。あれから12年が経ったが、いまだ完全な復興はされていないという。このメモリアルデーに、筆者はなんと、宮城県仙台にいたのである。ちなみにこの日は土曜日。

 仙台東ロータリークラブの創立60周年記念大会に講演者として呼ばれたのである。講演に先立ち、記念式典などが開催されたが、東日本大震災犠牲者追悼・黙祷を全員で捧げる時に、なぜかあの頃のことを思い出し涙ぐんだ。リーマンショックでズタズタになった日本経済にあって、さらに追い打ちをかけるような東日本大震災は、ダブルショックであり、これは実に大変なことであった。

 筆者を招いてくれたきっかけは、岩手県奥州市(いまやスーパーヒーローの大谷サンの故郷)の講演会に来ていた東日運送(仙台市若林区)という物流カンパニーの代表取締役である庄子哲朗氏が、この創立60周年記念大会に相応しい講演者として、推薦してくれたからである。ちなみに、大谷サンは3月12日の夜に外野席上段に飛び込む先制3ランホームランを叩き込んだ。ここでも筆者はなぜか大震災のことを考え、泣きそうになったのである。

 「東日本大震災の後は、やはり業績は落ち込み、とても苦しんだ。それでも頑張って1台3000万円もする半導体製造装置専用のトレーラーを26台も購入した。近く2台が追加される見込みであり、ありがたいことに当社は、東日本エリアでナンバー1の装置向け運送カンパニーになったと自負している」

 こう語るのは、前記の庄子哲朗氏である。庄子氏のお付き合いするカンパニーは数多い。仙台エリアに拠点を持つ東京エレクトロンは、まさに大切なお客様だという。また、石川県にあるパワー半導体の加賀東芝エレクトロニクスとも付き合いが増えてきた。もちろん、CMOSイメージセンサー世界トップを走るソニーとも長くお付き合いがあるのだ。

 「昨今の半導体ブームを反映して、当社の業績もすごいことになってきている。これもあって、岩手県奥州市に2万3000m²の用地を取得し、ここに新たな物流センターを建設する考えだ。そしてまた、成田空港の近くにも約2万m²の用地を購入した。半導体産業がいかに重要な産業であるのかを認識した時に、当社の上昇が始まったのである」(庄子氏)

 この話を聞いていて、被災したエリアの福島、宮城、岩手など東北の方々はその持てる粘り強さをもって、運命に負けることなく歩んでいるということがよくわかった。講演を終えた後の交流会で、多くの方々が筆者を訪ねてきたが、ソニーやパナソニックや東京エレクトロンなどに関わりを持つ方も多く、それなりに意味のある訪問にはなったのだ。

記念式典で唄うゴールドブレンズはとてもすばらしかった
記念式典で唄うゴールドブレンズは
とてもすばらしかった
 ゴールドブレンズというコーラスグループが記念式典の献奏をされたが、「花は咲く」というものであり、どのような運命があっても、いつか花は咲く、というその歌詞にまたも涙がにじんでしまった。そして、訪れる人たちの中には、やはり東日本大震災は風化していないというコメントも多く、彼らの語る言葉の重さにたじろいだものである。

 3月11日の夜に開催されたWBCにおいては、ロッテの佐々木朗希投手が先発し、好投した。彼は東日本大震災の津波で父親と祖父母を失っている。そしてまた、フィギュアスケートで世界的なスケーターとして知られる羽生結弦氏も宮城県民であり、この大震災のあった日のことを覚えて、次のように語ったのだ。

 「今日ある命も明日もあるとは限らない。今日の幸せは明日も続かない。だから今ある命、今の時間を幸せにしていこう」


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 代表取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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