電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第59回

「日本がこれから困ることすべてに挑戦していきたい!!」


~オクト産業は福島県郡山に放射線測定器のショールーム開設~

2013/9/27

 「私たちは日本のモノづくりをR&Dで支える専門家集団だ。安全・安心をキーワードに放射線測定、セキュリティーシステム、さらには2次電池、新エネルギーなどにも多角展開していきたい。とにかく、いつも考えているのは、日本がこれから困ることすべてに挑戦する意志と技術を持ちたいということだ」

オクト産業の精鋭スタッフ(右端 安達社長)
オクト産業の精鋭スタッフ(右端 安達社長)
 こう語るのはオクト産業(株)(東京都板橋区東新町1-49-16、Tel.03-3958-0910)を率いる代表取締役の安達良平氏である。安達氏は東京・板橋生まれ、玉川大学文学部芸術学科で工業デザインを専攻し、夜間では御茶ノ水美術学院で学び、卒業後は名古屋上場の天龍木材(株)に入社する。4年間在籍し、その後、安達工業デザイン事務所を設立し、初仕事は宝生流能楽堂の意匠設計であった。27才でオクト産業を設立し、様々な実績を積み重ねていく。
 「精工舎、積水化学などの仕事で地歩を築き、ソニーと出会う。ソニーにおいては新製品の開発提案や量産の請負をこなし、キヤノンでは複写機の要素技術の開発協力をさせていただいた。大きく飛躍するのは、美和ロックにおける仕事であり、無線錠の開発製造で多くの信頼をいただいた」(安達氏)

 ちなみに、安達氏のひいおじいさんは日本で初めて孤児院を、後に板橋区養育院を作った社会福祉事業家で知られる安達憲忠氏だ。憲忠氏は福島で新聞記者としても活躍し、自由民権運動に携わり、岡山自由党四天王の一人と称されたという。

 さて、オクト産業の最近のエポックメーキングな活動は、先ごろ福島県郡山市に放射線測定機器のショールームを開設し、地域住民向けに放射線測定セミナーを実施していることだ。これに先立ち、同社は福島原発事故への対応で、日本政府と協力協定を結ぶベラルーシ共和国において放射線測定器分野のトップメーカーであるポリマスター社とパートナーシップ契約を締結している。この新設された福島ショールームにおいては、ポリマスター社製品の展示やデモンストレーション、さらには地域住民に対する放射線測定や安全性などをテーマにセミナーを開催していくというのだ。将来的には関連企業とのアライアンスを拡げ、放射線測定機器における「Made in ふくしま」のブランドを実現したい、と製造までを見据えたプランも持っているのだ。

 「最近では、中国において、女性のスチュワーデスが携帯電話で感電死した。水に濡れていたために一気に220Vが体内に流れ死亡するという不幸な事故が発生した。私たちは測定における様々な国際認定を持っており、多くの信頼を得ている。評価センターも社内にある。こうした事情で中国の携帯電話の不具合についても、中国TV局より取材があり、オクト産業で様々な分析を行った」(安達氏)

 オクト産業は98年に不要輻射を測定する電流プローブを発明し、産業部門でグッドデザイン賞を受賞している。工業デザインの重要性については深く認識しており、機能・コストだけでなく、「美しいもの」を志向していくというのだ。お客様の満足感を達成したうえで、「あっ」と驚かせるデザインを成し遂げたときにアイデンティティーを感じるデザイナーは、この会社には確実に存在する。

 今後の会社の方向性については、という質問に対し、安達氏は穏やかな笑顔を浮かべながら、こう述べている。
 「管理野球は好ましくない、と常々思っている。5~6人の小集団があれこれと言いながら、いいものを作っていく。1人の人間が設計もマーケティングもデザイナーもこなせるようになれば、こうした小集団の集まりがすばらしいカンパニーを形成していくと信じている」

 「みんなが困っていることを解決する会社」であるからして、蓄電のリチウムイオン電池、再生可能エネルギーの太陽電池などのエネルギー系や製品評価系の製品開発には、今後も積極的に取り組むという。現状の売り上げは6億円くらいであるが、当面は15億円達成を掲げており、海外比率については現在の10~20%を50%まで拡大していく考えだ。これまでに最高と思われる製品開発を1つ挙げて下さい、といったところ、安達氏は遠くを見るような眼でポツリとこうつぶやいた。
 「いくら振り返っても、超超うまくいったものはない。大きな失敗はなかったけれど、ただ、少しだけ良かった、というものはある。まだまだ満足できない。これからが勝負、いつかはスゴイものをといつも願っている。それも、この日本が困っていることを解決できる製品でなければならない」

 小さな会社ではあるが、安達氏をリーダーにいただくこのカンパニーで働く人は、もしかしたら超幸せなのかもしれない、とふと感慨にふけった。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。日本半導体ベンチャー協会会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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