商業施設新聞
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
No.890

地域木材を使用した地域密着型のSC


今村香里

2023/1/17

 2022年12月1日、大阪市西区の日生病院跡地に複合商業施設「フレスポ阿波座」(大阪市西区立売堀)がオープンした。大和リースが手がける都市型のNSCで、子育て世代向けや健康・医療系のテナントを誘致し、地域の拠点となる場を提供している。同施設は、大阪メトロ・阿波座駅から至近で、18年に閉鎖した日生病院の跡地6115m²に位置し、建物はS造り3階建て延べ9625m²。病院跡地のため、引き続き近隣住民の生活を支える拠点となるよう、心も体もより健康になる医療と健康をテーマに開発した。テナントは、食品スーパーやサービス業態だけでなく、医療モールを導入するなど健康に貢献する施設づくりがなされている。大和リースは商圏3~5kmの郊外を中心にフレスポ業態を展開しているが、同施設は、商圏が1kmの都心のNSCとなり、近年は都心タイプが増えているという。コンパクトでも充実した内容で都心の生活に必要な存在だ。

フレスポ阿波座では「おおさか河内木材」のロゴが印字された木材を使用している
フレスポ阿波座では「おおさか河内木材」のロゴが印字された木材を使用している
 加えて、エントランスやエスカレーター付近などで部分的に「河内木材」を使用しており、かつて材木の立売が盛んに行われていた「立売堀(いたちぼり)」の歴史を再現するなど、大和リースが近年取り組んでいる地域に根差した施設づくりが施されている。今回使用した「河内木材」は、「おおさか河内材」と呼ばれるブランドで、河内長野市や千早赤阪村産の材木を木材ブランドとして大切に育てているもの。使用実例を掲載したWebサイトによると、河内木材の特徴は木目が真っ直ぐで切口が真円に近く、年輪の幅も緻密で均一で、独特の木目のきめの細やかさ、ほんのりピンクがかかった木肌の美しさが特徴だという。そして、粘りがあり丈夫な良質材として内装、外壁、家具など様々な用途に活躍しているそうだ。

 13年より「おおさか河内材」は認証材となり、証明書の発行が可能となった。証明された木材は、地元で育った地域木材のため、安全・安心に利用することができるほか、一定以上認証材を使用した居宅を新築・購入する際に、銀行(おおさか材は近畿大阪銀行)の住宅ローンの金利優遇を受けられる場合もあるという。

 話は逸れるが、国が地域木材の使用を通じたSDGsを推進するなど、近年は木材が見直されており、商業施設の建築物にも用いられる機会が増えている。記憶に新しいのは、天王寺公園のエントランスに完成した「てんしば」で、近鉄不動産が手がけ、レストランやカフェが入る低層の建物は木造となっている。芝生と木の自然とぬくもりを感じられる心地良い都市公園に再整備されている。

 こうした木材の使用もそうだが、商業施設では、地域密着やここにしかないものなど、地域の取り組みや地産地消がトレンドだ。今回紹介した「フレスポ阿波座」では、地域に根差す施設づくりとして、地元産の木材を使用したり、病院跡地を継承した医療モールを導入したりするなど多角的だ。今後も様々なデベロッパーの地域性に注目した施設づくりを見ていきたい。
サイト内検索