2022年は、ホームセンター(HC)大手が従来の郊外型大型店から駅前の都市型立地へ舵を切り、HC業界で歴史的な1年になった。DCMは商業施設「恵比寿ガーデンプレイス」(東京都渋谷区)に出店、カインズはハンズ(旧東急ハンズ)を子会社化することで主要都市の中心部への進出を果たした。ジョイフル本田は、栃木県第2の都市・小山市で駅前立地の新業態を開発した。23年はこれらの施策がどのように消費経済を刺激し、DIYの人流を創り出すのか確かめる年になる。
DCM(株)(東京都品川区)は、22年11月8日に東京都心部へ初めて進出し、恵比寿駅に直結した大型商業施設「恵比寿ガーデンプレイス」内で出店した。体験型新業態の「DCM DIY place」を開発し、女性や若者など新たなDIY利用客を開拓する。都心部の恵比寿へ初出店するに当たり、東京23区内に居住する女性約300人に調査したところ、悩みの上位は(1)収納スペースの確保、(2)台所・浴室・トイレの清掃・防カビ、(3)排水溝など、普段掃除し難い個所の清掃、(4)防災対策、(5)壁や床の補修となったことから、売り場では収納、清掃、水回り、壁・床の補修品目を充実させている。
新店の内覧会には、DCMアンバサダーとして、俳優のとよた真帆さんが登場し、「私は子供のころから図画工作が好きで、今は家で行っているDIYの様子をSNSで上げたり、番組でDIYの冠番組をさせてもらっている。芸能生活と同じようにDIY歴が割と長く続いている。一般的には、DIYというと難しい印象を持つ人もいるが、接着剤やねじを使うだけでそれはもうDIYの領域に入っている。DIYを身近に感じて、店に足を運んでほしい。店員がやさしく教えてくれる」と来店を促した。
「DCM DIY place」ではとよた真帆さんが登場
とよたさんがDIY好きの俳優だったことは今回初めて知った。テレビドラマでしか見たことがなかったので、DIYと結びついたことが意外だった。とよたさんは発表後に筆者との立ち話にも応じてくれる気さくな俳優で、「最近は映画や、WOWOWに出演している。地上波テレビでは、バラエティ番組に出ている。コロナ禍ではテレビ局が2時間ドラマをあまり製作しなくなった」と語ってくれたので、筆者はDIYにますます関心を持つようになった。
また(株)カインズ(埼玉県本庄市)は、ハンズ(旧東急ハンズ)の株式譲渡を22年3月31日に受けて子会社化した。ハンズは、都心部や海外に店舗を持ち、これによりカインズは主要都市の中心部への進出を果たすことになった。カインズの代表取締役社長兼ハンズ代表取締役会長の高家正行氏は記者発表会で「日常のくらし全般、そして地方や郊外に強みを持つカインズと、趣味、ホビークラフト・都市部に強みを持つハンズは、商品の品揃えで各々個性を持つが、来店するお客様に共通している思いは『自分らしいくらしの実現』であると感じている。くらしをより良くしていこうというカインズとハンズの価値観には高い親和性がある」と話した。ハンズは、「手」をモチーフにした漢字を「一筆書き」でまとめた新たな会社のロゴを、22年11月上旬に開店した「名古屋松坂屋店」から使用しており、渋谷店では23年春、新宿店は23年夏に架け替えを予定している。ハンズと言えば、「手の復権」を掲げて1976年に創業し、物質社会に対して手作りやそのぬくもりを見直そうという問いかけを放って成功した。今後は、「手」の復権とともに、業績の復権にも期待したい。
さらに(株)ジョイフル本田(茨城県土浦市)は、22年4月に、栃木県小山市で駅前立地の新業態「ジョイホン小山駅前店」を開業した。イトーヨーカ堂跡への居抜き進出で、ジョイフル本田初の駅前立地だ。ディズニーゾーン、アウトドアゾーン、ペットゾーンなどを設け、HCの領域を超えた品揃えを特徴としている。
23年はHC各社の駅前立地でのDIYの訴求と、それによりいかに新たな人流を創り出しているのかに注目していきたい。