商業施設新聞
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No.888

苦境にある韓国コンビニ業界


嚴在漢

2022/12/27

 急激な最低賃金の引き上げやコロナ禍の長期化により、韓国コンビニ業界が苦境に陥っている。CU、セブン-イレブン、GS25の韓国主要コンビニ3社が韓国国会に提出した資料により、コロナ禍の3年間でコンビニの業績が大きく失速したことが分かった。これには文在寅(ムン・ジェイン)前政権5年間における最低賃金の引き上げも大きく影響した。

 2017年に1時間あたり6470ウォンであった韓国の最低賃金は、22年には9160ウォン(約964円)となり、17年に比べて41.5%強増加した。これにより、韓国全土のコンビニは人件費が膨らんだ。コンビニの運営コストのうち、人件費が占める割合は70%前後だが、この割合も17年以降は高まっている。16年に最低賃金水準を稼げないコンビニは全体の11.5%であったが、21年は同30.3%、22年7月時点では同30.4%とその比率は高まっている。

 こうした人件費と賃貸料などに耐えられないコンビニは、相次いで閉店に追い込まれた。最低賃金の引き上げ率が最も高かった18年、コンビニ3社の閉店数は急増し、それ以降も持続的に増加している。文前政権におけるいわば「所得主導成長(社会民主主義的な理念を内包した経済政策)」の副作用は、小商工業者や自営業者に悪影響を及ぼしたのである。

ソウル市内のあるコンビニ店
ソウル市内のあるコンビニ店
 近年の韓国におけるコンビニ店主は「58年生まれのいぬ年」が多い。朝鮮戦争の休戦(1953年)後、いわゆるベビーブーム世代で90年代における韓国の経済成長を牽引した年齢層である。この世代は韓国総人口の16%を占める800万人ともいわれており、定年を迎え、第2の人生としてコンビニ店主を選んだ人々が多い。だが、閉店という厳しい現実に遭遇し、数千万円という赤字を抱えたまま、退職金まで費やしたケースが少なくない。

 コンビニは深夜の売り上げが多い。しかし、新型コロナの長期化に伴い、客足が途絶えて売上高も急減している。やむを得ずアルバイトの代わりに店主の家族をも動員し、24時間交代で働いても赤字を避けられない状況が続いている。このような状況下、韓国小商工業者は政府に最低賃金に対する業種や規模別の差等化を求めている。また、最低賃金の引き上げに反対するコンビニ店主は、遅い時間帯に商品価格を引き上げる「深夜割増制度」の導入を訴えている。

 韓国経済の状況は、輸出低迷に伴う未曾有の貿易赤字と、アメリカのジャイアントステップ(政策金利の大幅な引き上げ)に同調する金利の引き上げにより、かつてないレベルであった不動産バブルが弾けつつある。今後も個人消費が冷え込むことで、コンビニ業界のさらなる苦難は続く見通しだ。
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