三生医薬(株)(静岡県富士市厚原1468、Tel.0545-73-0610)は、南稜工場(静岡県富士宮市南陵12)内に最先端の製剤技術の開発基地「イノベーションセンター」を開設した。同社が開発した新製剤技術「ユニオーブ」をはじめとしたイノベーションを世界に発信する拠点として活用していく。
同社は健康食品および医薬品の企画・開発・受託製造会社(CDMO)で、カプセル受託製造のリーディングカンパニー。同社が開発したユニオーブはゲル化する液体に有効成分を混ぜて固めた製剤で、処方の多様性を確保し、製剤も顆粒サイズまで小型化することで、どのような成分でも配合できる。様々な用途に活用できる可能性を秘めたユニバーサルな製剤で、現在は注射や点滴でしか投与できない薬の経口摂取や核医学検査における個別化医療・個別化予防を可能にすることが期待されている。
今回開設したイノベーションセンターは、南稜工場敷地内に2階建て延べ床面積2441m²で建設。開設時の投資額は設備なども含めて25億円。1階はユニオーブの生産エリア、2階はオフィス・ラボエリアとなっている。2階は研究開発部門を中心に9つの部署が入っており、オフィスエリアはフリーアドレスで、あえて導線を交錯させることで交流を促進させている。Web会議用ルームやリラックススペースも設置している。ラボエリアは最先端の製剤・カプセル技術の研究開発を実施。これまで開発部門ごとに分かれていたものを1カ所に集約した。同社では、21年に試作体感スタジオのADC(アプリケーションディベロップメントセンター、東京都品川区大井1-31-1)を開設しており、こことの連携も図る。
1階はユニオーブの生産エリアとなっている。封じ込め設備(アイソレーター)、生産支援システム、カスタム設備を特徴としており、既存の設備・工場では対応できないユニオーブの生産に対応する。アイソレーターの性能はもっとも厳しいレベルのカテゴリー6(0.1μg/m3以下)のものを導入。ユニオーブによる製剤に即した設備を実現するため、専用の造粒装置、篩過装置を開発し歩留まりや目詰まり改善のためのカスタムを施している。現状ミニエリアのみに生産設備が実装されており、生産能力は日勤で5kg、24時間稼働で15kgとなっている。承認などの問題もあり、実際の生産は今後開始する。工場1階にはミニエリアの4~5倍の能力に対応するラージエリアもあり、将来はここも活用していく。ラージエリアへの投資は数億円となる見込みで、ユニオーブの顧客への採用の状況などを見ながら設備の導入を進めていく。
同社代表取締役社長の今村朗氏は「イノベーションセンターを拠点に、ユニオーブをはじめとする最先端のイノベーションを世界へと発信する中で、静岡発のグローバル企業となることを目指していきたい」とコメント。ユニオーブには可能性があり、大量の商業生産開始時にはラージエリアに導入できる設備とは桁違いの能力が必要となる。「南稜工場の敷地には工場拡張用のスペースも確保してあり、ここを活用することも視野に入れている」(今村社長)と語った。
(編集長 植田浩司)