サンケン電気(株)(埼玉県新座市)は、車載・白物家電向けを主軸にパワー半導体を展開する有力企業。日本国内を主戦場に、昨今は大手自動車およびティア1サプライヤーが集積する欧州・米国市場での開拓にも力を入れている。その一環として、同社ではこのほど、欧米それぞれの地域に販売拠点を設置した。欧米での販売戦略について、パワーモジュール・デバイス本部長の吉田智取締役上級執行役員、コーポレートデザイン本部経営企画室長の丸尾博一執行役員に話を聞いた。
―― 欧州、米国に販売拠点を設置されました。概要から教えて下さい。
吉田 欧州は独フランクフルト近郊に、米国はイリノイ州シカゴ近郊に2022年12月からオフィスを新設した。各地域の顧客サポートをさらに充実させるため、セールスエンジニアなどを拡充し4月から本格的に業務を開始する予定だ。当初は各10人程度のスタッフでスタートさせ、セールスエンジニアのほか、財務面もサポートできるよう管理部門の人材も配置する。今後の展開に応じて、順次スタッフを増強できればと思っている。ともに自動車産業が集積している場所でもあり、重要顧客への販売やサポート活動を強化するためのロケーションの選定としている。
―― いま、このタイミングで販売拠点を設置された背景は。
丸尾 当社には子会社に米国本拠のアレグロマイクロシステムズがあり、これまで欧米地域に関してはアレグロがサンケン製品の販売を担当、逆に日本国内に関してはサンケンがアレグロ製品の販売を担当するという、ある種のすみ分けを図ってきた。しかし、サンケンとアレグロそれぞれの製品開発・販売責任を明確化することが重要と判断し、9月にアレグロ製品の日本国内での販売について商流の変更を公表している。
―― 具体的には。
丸尾 アレグロ製品については今後、商社を介した販売を行っていく。同時に我々サンケン製品の欧米地域での販売についても、従来はアレグロの営業リソースを活用していたが、これを改め、我々独自に行っていくことになる。今回の販売拠点設置はその一環だ。当社はもともと、国内のOEMならびにティア1サプライヤー向けには強みを持っていたが、欧米地域はやはり手薄な面が否めず、今回の拠点設置を機に、てこ入れを図っていきたい。
―― 具体的な目標について。
吉田 欧米市場での売上規模を30年から35年までに現在の3~5倍程度に引き上げたいと考えている。特に重視している自動車市場においては、海外の有力なパワー半導体メーカーが存在感を示しているが、サプライチェーンリスクが高まるなかで、半導体製品の調達分散化もニーズとして高まっている。我々としてもそこにチャンスがあると見ており、26年以降の車種を念頭に積極的な販売活動を図っていきたい。過去は見積り依頼すらなかったことも多かったが、時代の変化とともにチャンスが訪れていると実感している。
(聞き手・編集長 稲葉雅巳)
本紙2022年12月1日号3面 掲載