商業施設新聞
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No.884

百貨店×SCの行方


岡田光

2022/11/29

 セブン&アイ・ホールディングスの子会社であるそごう・西武の売却が正式に発表された。売却先は世界最大級の不動産投資ファンド運用会社であるフォートレス・インベストメント・グループで、フォートレスは譲渡に際して、ヨドバシホールディングスをビジネスパートナーとし、企業価値の最大化に努めるという。そごう・西武の店舗は、西武が池袋本店を含む6店、そごうは横浜店を含む4店の計10店があり、これらの店舗がヨドバシホールディングスとどのようなシナジー効果を生み出すのか注目される。

 かつて関西エリアにもそごう・西武の店舗は数多くあった。そごう心斎橋本店は閉店後、隣接する大丸に売却され、大丸心斎橋店北館→心斎橋PARCOと変化した。西武八尾店は閉店後にザイマックスが改装を行い、大型商業施設「リノアス」として再オープン。そごう西神店も閉店後に双日とプライムプレイスが改装を実施し、「エキソアレ西神中央」としてリニューアルオープンした。
 これらは百貨店から商業施設に転換された事例であるが、そごう・西武の旧店舗の中には、百貨店を継承した店舗もある。それが、エイチ・ツー・オー リテイリングが取得した「そごう神戸店」と「西武高槻店」、現在の「神戸阪急」と「高槻阪急」だ。

大規模改装を実施している「高槻阪急」
大規模改装を実施している「高槻阪急」
 阪急阪神百貨店が運営する神戸阪急は、JR三ノ宮駅前に立地し、1駅先の元町駅に大丸神戸店というライバルが存在するものの、三ノ宮駅の周辺に百貨店がないため、これまでも高級品などを求める神戸市民のニーズをうまく汲み取っていた。
 8月末に開業した改装第1弾では本館の2~4階に「KOBE HANKYU BEAUTY」を設けており、2階のラグジュアリービューティー売り場では、三宮エリアのメイクアップの需要を取り込むため、メイクアップゾーンを構築。また、3階のライフスタイルビューティー売り場では、これまでの神戸阪急になかった風呂=バス関連のブランドを導入するなど、既存MDの強化や欠落しているMDの充実を図り、既存客に加え、新規客を獲得する考えだ。私も内覧会に参加させてもらったが、実際に売り場を見て、「阪急阪神百貨店は百貨店の継承をうまくやるな」と感心した。

 感心する一方で、私自身はもうひとつの百貨店である高槻阪急が気になって仕方がない。高槻阪急も約23億円を投資し、大規模改装を実施中であり、2023年秋ごろに完了する予定。何が気になるのかというと、高槻阪急が百貨店と専門店のベストミックスを目指しているからだ。
 昨今、百貨店業界では専門店の誘致事例が増えており、競合他社のJ.フロント リテイリングや高島屋は百貨店の隣にショッピングセンターや専門店を設ける開発を進めている。阪急阪神百貨店も「阪急西宮ガーデンズ」で百貨店とSCの融合に成功しているが、果たして、今の小売大競争時代に、百貨店と専門店のベストミックスを実現できるのかどうか。23年秋には「高槻阪急スクエア」と改称するこの百貨店の行方が、百貨店とSCの融合に新たな答えをもたらすかもしれない。
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