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第500回

日本ファインセラミックス(株) 代表取締役社長 田中宏氏


SiC/SiNなど大幅強化
100億円の大型投資も計画

2022/11/11

日本ファインセラミックス(株) 代表取締役社長 田中宏氏
 日揮ホールディングス100%出資会社で、高機能セラミックス部品などを手がける日本ファインセラミックス(株)(仙台市泉区)は、半導体製造装置向けSiCなどの組み込み部品や窒化ケイ素セラミックス(SiN)製絶縁放熱基板事業を一気に拡大する。2022年に入り拠点工場での増産投資を相次いで公表しており、23年以降の本格成長を見据える。日本ファインセラミックス(株)の田中宏代表取締役社長に今後の事業展開を聞いた。

―― 注力事業ならびに足元の市況について教えて下さい。
 田中 当社は、SiCやSiNなどの非酸化物セラミックスを主体とした「エンジニアリングセラミックス事業」、光通信デバイス向けのサブマウント基板や高周波用薄膜集積回路基板などを手がける「エレクトロニクセラミックス事業」、FPD製造装置や半導体製造装置向けに軽量高剛性が必要な機構部品として使用される「MMC(金属セラミックス複合材料)事業」、さらにセラミックスの精密加工を得意とする「受託加工事業」の4つの事業を展開している。
 半導体市場の投資拡大を受け、製造装置に搭載されているセラミックス製の組み込み部品や機構部品向けに、旺盛な需要が継続している。また、EV向けパワーモジュールの重要な放熱対策部品である絶縁放熱基板として、高信頼性で定評のあるSiN基板の需要も非常に好調だ。

―― 貴社のSiN基板の特徴は。
 田中 原料に金属シリコン(Si)を用いる点が既存のSiN基板とは異なる。世界中に豊富にある材料なので既存製品より原料調達が容易で、サプライチェーンの安定に貢献できる。
Si原料からSiNの白板を量産
Si原料からSiNの白板を量産
 産業技術総合研究所とSiの反応焼結法を用いた製造方法の開発・確立を目指して取り組んできた。従来のSiNの熱伝導率を大幅に上回る理論値(200W/mK)に近い170W/mKの作製に実験室レベルでは成功している。
 現在、量産レベルで安定して製造できる熱伝導率90W/mKクラスで、厚み0.32mmならびに0.25mmの製品を車載用パワーモジュール向けに本格出荷している。現状の1.2~1.4倍程度に熱伝導率を引き上げた製品を開発中であり、白板を中心に外販していく。


―― セラミックス事業で7月にM&Aも実施しました。
 田中 昭和電工マテリアルズ(株)からセラミックス事業を譲り受け、7月に「JFCマテリアルズ(株)」として始動した。自動車ウォーターポンプ用メカニカルシールや半導体製造装置、産業機械向けのSiCやアルミナ、ジルコニア強化アルミナセラミックスなどをラインアップに持つ。大型部品や量産製品を多く手がけていて、当社の既存事業とは直接の競合とならず顧客層を拡大できるメリットもある。半導体や次世代自動車などの成長分野で新製品開発を加速する。

―― 相次いで投資計画を公表されています。
 田中 旺盛な需要に対応するため決断した。まずは半導体製造装置用のセラミックス製品ならびにMMC部品を、より高精度に加工するための製造ラインを増強していく。一方、SiN基板は富谷事業所で第4棟目を建設、量産ラインを整備中だ。これによりセラミック関連製品は25年夏ごろには従来の2~3倍(数量ベース)まで拡大する。
 さらに、23年12月をめどに宮城県富谷市内に新たな土地(敷地12万5000m²)を取得し、当社が24年1月にも新工場の建設を開始する計画だ。第1期で半導体製造装置向けのセラミックス部品の量産拠点を設ける。稼働は24年度内を見込む。第2期でSiN基板の量産工場も25年内にも建設する。今回の一連の関連投資額は100億円を見込む。

―― ファインセラミックス関連の中長期的な事業計画のイメージは。
 田中 親会社である日揮ホールディングスは、グループ内に触媒をはじめファインケミカル、ファインセラミックスなどの高機能材製造事業を以前から手がけており、25年には同事業で600億円(現在は400億円強)に引き上げる中期経営計画を推進中だ。このうち、特にケミカル触媒やSiN基板事業などの戦略製品で100億円を売り上げる計画だ。


(聞き手・特別編集委員 野村和広)
本紙2022年11月10日号5面 掲載

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