商業施設新聞
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
No.881

決済から考える顧客との信頼関係


北田啓貴

2022/11/8

 現代社会においては、決済方法がとにかく多様化している。交通系ICカードでの決済やPayPayなどのQRコード決済が普及し、現金を持たなくてもスマホ1台あれば、大抵の外食や買い物ができるようになってきた。2023年4月からは、スマホの決済アプリの口座に直接払い込む「デジタル給与」も解禁される見通し。ちなみに筆者自身は基本的に現金派だ。ただ、飲み物を購入する際に小銭がないときは交通系ICカードで支払ったり、趣味のウォーキング中は財布を持たず、必要な場合はスマホで決済するなどTPOに応じて使い分けている。

 決済方法が多様化する一方で、いわゆる後払いなどについては普及していない。ここで言う後払いとは、飲食店などのレジで決済を完了せず、後日請求して支払い決済が完了する仕組みのことである。こうすることで、飲食店でたまに見かける割り勘や注文したメニューごとに個人が支払うことによるレジの混雑も解消される。

後払いシステムを導入した「和牛料理 一石三鳥」
後払いシステムを導入した「和牛料理 一石三鳥」
 その後払いを実現したのが、9月1日に大阪市内でオープンした「和牛料理 一石三鳥」だ。運営するのは、東京都内で完全会員制の鮨屋などを展開する(株)Human Qreateで、同店でも焼肉や和牛料理を中心に、年間約100頭しか出荷されない希少な銘柄牛「純但馬うすなが牛」を使用した逸品料理を提供するなど高級店に仕上げている。同社が「和牛料理 一石三鳥」で後払いシステムを導入した背景にあるのは、利用ニーズである。Human Qreateは同店を記念日や祝いの席で利用されると想定している。ちなみに、支払いは退店後ショートメールでオンライン決済フォームを顧客に送り、クレジットカードか銀行口座で支払ってもらう仕組みとなっている。コロナ禍の現代においては、ニーズのある非接触も実現することができる。また会社側にとっては人件費の抑制、店の従業員にとってはレジ打ちの業務がなくなった分、調理や接客に集中でき、サービス向上を図りやすくなる。

 今後飲食店や小売り店も含め、課題となるのは顧客との信頼関係の再構築だ。「和牛料理 一石三鳥」のような取り組み以外でも、街を歩くと餃子の無人店舗が増えたり、決済における顧客との信頼関係を前提としたビジネスが確立されつつある。今後の顧客の利便性向上やリアル店舗でしかできない付加価値を与えるという意味においても、顧客との信頼関係の見直しが求められるだろう。
サイト内検索