(株)SCREENセミコンダクターソリューションズ(京都市上京区)は、半導体洗浄分野で世界のリーディングカンパニーといえる存在である。売上高も2022年3月期に念願の3000億円を突破し、SCREENホールディングス全体の売上高4118億円のなかで、まさに中核を占めるところまで成長してきた。設備投資についても積極的に取り組んでおり、新工場の「エス・キューブ フォー」の立ち上げを中心に、全体の生産能力は20%増になるという。今回は同社代表取締役 社長執行役員の後藤正人氏にお話を伺った。
―― 売り上げ、利益ともに最高水準となりました。
後藤 22年3月期の売り上げは3193億円まで押し上げ、21年3月期の2355億円に対し1000億円以上を積み上げる結果となった。これはひとえに当社の洗浄技術を高く評価していただいているお客様のおかげと考えている。SCREENグループ全体の中期経営計画のなかで、半導体製造装置事業(SPE)を3000億円台に乗せたいと頑張ってきたが、かなりの前倒しで達成することができた。
―― 利益水準も高いですね。
後藤 中期経営計画の中で営業利益20%を目標としてきたが、22年3月期に19.7%となり、ほぼほぼ目標に近づいたことになる。これからSCREENホールディングスの新たな中期経営計画を策定することになるが、もちろん上方修正の可能性は十分にあると思っている。
―― 設備投資も積極的に推進しています。
後藤 マザーファクトリーともいうべき彦根事業所には100億円を投じ「エス・キューブ フォー」という新工場立ち上げを進めており、23年1月の操業開始を予定している。スケールは9625m²、主力製品である枚葉式洗浄装置の生産能力を大きく引き上げる。あわせて生産能力増強に伴う廃液処理や人員増加のための施設拡充、既存設備の改修、厚生施設の建設なども実行する。
―― 「エス・キューブ スリー」に次ぐ大型投資ですね。
後藤 「エス・キューブ スリー」は19年1月に稼働した。これにも90億円を投入し、延べ1万2458m²のスケールとなった。免震構造を採用し機能的な物流システム、大型立体自動倉庫を導入した。新工場の「エス・キューブ フォー」では、「エス・キューブ スリー」で生産された装置やユニットの出荷前洗浄工程などを強化していく。彦根事業所では、こうしたことに先立ち、フラットパネルディスプレーの工場の一部を半導体製造装置向けに切り替えており、全部で5棟の工場が半導体向けにシフトされている。
―― いわゆるIoT生産方式については。
後藤 これは重要なことだと思っている。スマート化したセンサーで情報を吸い上げ、パフォーマンス向上を図る。AIプロジェクトも立ち上げている。ますます複雑となるプロセスの最適化には、これまで優秀な人手に頼ってきたが、何としても近い将来にはAI処理にしていきたい。
―― 2~3nmという超微細加工プロセスの対応もありますね。
後藤 そうした最先端プロセスについては、何といってもコンタミ除去が最重要となる。歩留まり向上のために、洗浄は次のステップにコンタミを持ち込ませないという大切な役割を果たす。工程数はさらに増えるともいわれており、洗浄装置も増えていく見通しだが、しっかりと供給責任を果たしていきたい。
―― レガシープロセスについては。
後藤 非常に足りないといわれる半導体デバイスの多くは、実はレガシープロセスだ。それだけに枚葉の強化だけではなく、バッチ式洗浄装置についてもお客様の要求に応えなければならない。地域別売上高も見れば、アジア・オセアニアが約60%を占めており、中国向けは1000億円を超え、台湾向けをわずかに抜いている。これをみても需要拡大は最先端ばかりではないことがよく分かる。
―― SDGs革命が進んでいますね。
後藤 SDGsに対応することは、いまや企業の社会的責任のひとつだ。装置全体の消費電力の削減はもはや待ったなしの課題だ。データセンターひとつを見ても、半導体デバイスは大量の電力を使う。デバイス業界、装置業界、さらには材料業界も含めて、SDGs革命への貢献を果たしていかねばならないと切に思っている。
(聞き手・特別編集委員 泉谷渉)
本紙2022年10月13日号1面 掲載