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川西市総合医療センター開院、405床全室個室、最新の医療環境提供(3)


公民の病院統合で充実の周産期医療、拡張性の手術室・高度急性期医療・効率的な病棟実現

2022/10/11

 川西市(兵庫川西市中央町12-1、Tel.072-740-1111)は、協立病院との統合による新病院「川西市立総合医療センター」(川西市火打1)を9月1日に開院した。建物は、9階建て延べ約3万6500m²で、周辺の自然を最大限に活かしたガーデンホスピタルをコンセプトに、トリプルクロス式の病棟を導入するなど、患者やスタッフにとって心地よい院内環境を整えている。

 3階は、手術部門(手術室7室)やHCU(高度治療室、20床)、供給部門(SPD、中央材料、ME)のフロアを展開。中央には1階の救急から垂直搬送が可能なエレベーターなどを配置しており、患者用エレベーターの近くには手術前の口腔ケアが行える口腔ケアステーションを設けたほか、物流用エレベーター近くに供給部門を集約し、搬送効率に配慮した。また、手術室前のホールや手術前室は従来の病院設計より広く確保したほか、器材置き場も多く確保するなど廊下に器材などがあふれやすい手術部門の問題を解消している。

 各手術室は、清浄度が高いエリア、日帰りオペのエリアに分けて配置し、さらに奥の7号手術室は、手術支援ロボットが将来導入できるよう電源系統が充実した仕様とした。これ以外にも将来手術室の増室が可能なスペースも1室分確保している。

手術支援ロボットも導入できる手術室7号室
手術支援ロボットも導入できる手術室7号室
ネットワークラウンジ
ネットワークラウンジ

 手術部門に隣接するHCUは、手術室に近い6床において、将来のICU(集中治療室)を見据えた仕様としている。このほかのHCUも将来、心臓血管外科を開設した際にCCU(心臓血管集中治療室)仕様に変更できるようになっている。また、入り口付近には大きな手術の観察室/見守り室(2部屋4床分)を配置した。

 さらに3階の南側は、医局・管理部門となっており、デスクはフリーアドレス制を導入し、その前には人気コーヒーチェーンのカフェをイメージしたおしゃれなネットワークラウンジを展開。ネットワークラウンジは、フリーアドレス制を導入したため、自由に利用できるスペースの確保と交流を図れる機能をもたせている。研修医室として、会議が行える個室もある。ネットワークラウンジ脇の階段は、2階の外来スタッフエリアや1階の患者支援センターまでのスタッフのスムーズな導線を確保。1階の眺望の良い公園側に配置したスタッフ専用食堂へもスムーズに移動でき、スタッフの働き方に配慮した最新の院内環境を提供している。

 病棟は、4~8階でトリプルクロス型の廊下とし、従来型の病院比で約10%の導線短縮を実現した。スタッフステーションから一目で病室が見渡せるようになっており、スタッフから患者への供給効率をアップさせる。病室は、全室個室であり、病室同士の対面を避け、すべて外側に配置することで窓からの眺望を重視した快適な環境を提供できている。また、有料・一般ともに病室の間口は3.1mと余裕をもたせ、医療行為や見守りが行いやすい病室内レイアウトとした。有料個室は感染対応の特別室も用意している。

 各クロスポイントには、病棟リハビリ、デイルーム、見守り室、透析対応室(4~7階で計8室)を配置。7階にはスタッフステーション付近にSCUを配置。8階は混合病棟と産科病棟を配置した。産科病棟では、スタッフステーション付近にLDR室を3室、病床カウントする新生児室4床(ほか1床分補完ありの計5床)を配置し、合計29室を確保した。LDR室のうち1室は、畳を設置した和室を用意し、妊婦のお産を個々に合わせた体制でサポートする。産科病棟の入退出はスタッフのスマホでカギの管理ができる最新システムを導入している。
トリプルクロスのクロス部分に配置したスタッフステーション
トリプルクロスのクロス部分に配置したスタッフステーション
眺望の良い個室病室
眺望の良い個室病室
産科病棟の和室分娩室
産科病棟の和室分娩室
 今回の新病院では、救急部門や高度急性期以外にも、小児周産期に力をいれており、公立病院でも不妊治療や分娩環境が充実している。院内を案内した指定管理者の(医)協和会 理事長 北川透氏は、「現在の病院の課題をクリアするべく設計では協和会側も参加し、設計事業者と連携して取り組んだ。公立病院と民間病院という事例の少ない再編統合では、民間病院のエッセンスを加えることで、地域医療の核となる公立病院でできることが増え、さらに双方のメリットを活かして地域に貢献できる医療体制が整ったと思う」とコメント。続いて、「特に小児周産期を充実させることにより川西市で安心して子育てできる環境を提供できると考える。再編統合により協立病院は閉院するが、近接する第二協立病院とともに、不妊治療など生殖医療を今後も強化し、地域医療を支えたい」と将来に向けても熱く語った。


(今村香里記者)

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