シャープセミコンダクターイノベーション（株）（SSIC、奈良県天理市）は、旧電子デバイス事業本部の分社化で2019年4月に設立されたシャープ福山セミコンダクター（株）を前身とし、21年11月に社名を新たにしてエレクトロニックデバイス事業セグメントの中核を担っている。代表取締役社長の藤野宏晃氏に現在の取り組みなどを聞いた。

―― ご略歴から。
　藤野　液晶ドライバーICの設計が入社して最初の業務であり、次に液晶テレビ創生期のIC開発に携わった。以降、シャープ本社直轄の商品企画プロジェクトチームを経て、LED照明の開発・商品化に携わった。14年から現在の部隊に所属している。

―― SSICの概要は。
　藤野　「ファブレスのマニュファクチャラー」としてデバイス事業を展開しており、顧客から設計・開発・製造を請け負うODM（Original Design Manufacturing）事業も展開している。従業員数は350人弱で、当社の出自から研究開発部門との結びつきも強い。
　製品分野は①センサー、②センサーモジュール、③CMOSイメージセンサー（CIS）、④SoCに大別される。①が売り上げの大半を占めており、②③④については新たな取り組みを推進している。シャープ社内向けと国内顧客向けがそれぞれ3割弱を構成しており、4割超が海外顧客向けとなっている。
　生産は、グループ企業のWSEC（無錫夏普電子元器件有限公司）をはじめ、中国にオプト関連の協力委託先があるほか、IoT関連は国内協力会社にお願いしている。半導体の生産委託先も確保しており、プロセスのインテグレーションにも一部で関与している。

―― ①について。
　藤野　オプトデバイスや高周波デバイス、測距センサーなどを主力としており、デジタル複合機やサニタリー業界、白物家電などが大手顧客だ。シャープでは全社としてカーボンニュートラルとヘルスケアへの取り組みを強化していく方針を打ち出しており、これに沿ってSSICはヘルスケア分野へのセンサーソリューションを拡充していきたいと思っている。

―― ②ではIoT用組み込みモジュールに注力していますね。
　藤野　当初はセンサーでIoT市場への参入を検討したが、近年では通信モジュールの展開・拡充に注力している。すでにNTTメディアサプライが提供しているビジネス向けモバイルSIMブロードバンドサービス「DoRACOON（ドゥラクーン）」にクラウドSIM対応端末を提供させていただいたほか、インフラ遠隔監視サービス向けのセンサーモジュールやIoTゲートウエイ、GPSトラッキングモジュールなども手がけている。今後はエナジーハーベスト電源などを融合して工業プラントなどにも活用先を広げ、DXという視点でインフラ強化に貢献していく。

―― ③の戦略は。
　藤野　CCDで培った技術やノウハウを活用してメタバースや監視カメラ、ドローンといった特定用途で差別化した性能を実現していき、ヘルスケアや車載への展開を志向していく。スマートフォン向けなど民生用を開発する予定は今のところない。メタバース関連ではすでにテープアウトした製品があり、22年度中にウエハーが出てきそうだ。監視カメラ向けは設計に着手したところで、新技術を実装する検討を始めた。車載用は少し先になるが、グループ会社のコネクションも活用して、23年後半に提案できるよう準備していく。社外に仲間を増やして技術力を高めていきたい。

―― ④に関しては。
　藤野　8Kテレビ用エンジンを開発・量産した実績がある。今後は5年先を見据えて通信用SoCに注力する。その一環として、21年10月に情報通信研究機構（NICT）の委託研究に採択され、東京大学や東京工業大学、日本無線、シャープの研究開発事業本部とBeyond 5G（B5G）向けIoT SoCおよびIoTソリューション構築プラットフォームを共同開発していく。
　これと並行して当社は、省エネプロセッサーや通信用カスタムSoCの開発受託などを含めたターンキーサービスも提供していき、次のコア事業にするべく育成を図っていく方針だ。

―― 今後の抱負を。
　藤野　中国市場の低迷が顕著になっており、次の市場をいかに早く開拓するかが重要なテーマになった。数年後を視野に入れ、いま何の種を蒔くべきか取捨選択をきちんとし、並行して開発部隊の強化をさらに進めていきたい。