商業施設新聞
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
No.875

秋の夜長とミステリー


新井谷千恵子

2022/9/27

 食に行楽、芸術など、たくさんの楽しみがある実りの秋。筆者はもっぱら、ミステリー小説を読むのにハマっている。小説を読むのは元々好きだったが、仕事で活字と向き合うためか、最近は遠ざかっていたのが事実だ。“本”自体は専門書を読んだりしていたが、小説となると想像力を駆使するためか体力が必要になるためか、どうにも食指が動かなかった。

おしゃれな書店の代名詞となりつつある蔦屋書店
おしゃれな書店の代名詞となりつつある蔦屋書店
 ある日、仕事の用事で代官山蔦屋書店に赴くことがあった。少し時間が空いたので、売り場を見てみると、そこには綾辻行人氏の名作である『十角館の殺人』が。筆者は中学生の時に、綾辻行人氏の『殺人鬼』や『眼球奇譚』を読んだことがあり、背伸びしたがりの子どもには大変刺激が強かったことを覚えている。しかしこの十角館の殺人は、大変面白いという書評を見たことがあった。秋ということも相まって、いつもと違うことにチャレンジするべく、十角館の殺人とポール・ベンジャミン氏の『スクイズ・プレー』を手に取ったのだった。

 実は元々、ミステリーというのは苦手であった。というよりは、血が出てくるようなスプラッターなものが苦手といった方がいいだろう。ミステリーとなると大抵人が死んでしまう。そして、そこには必ず血みどろなものが出てきてしまうだろう。そんな想像から、今までミステリーにはなかなか近づけずにいた。しかし今回、十角館の殺人を読んで、そんなイメージが180度転換した。

 第一に、文章が幻想的で美しい。それだけで心が鷲掴みにされる。次に、そんなに血みどろでなかった。もちろん人が死んでしまうのだが、うまく表現されることで、かなりマイルドになっていた気がする。さらに、謎解きが面白い。本当に「えー!」っと声が出てしまうくらい面白かった。

 そんなこんなで、今はもっぱらミステリー小説を読みふけっている。ポール・ベンジャミン氏のスクイズ・プレーももちろん面白かったし、綾辻行人氏のほかの作品も大変面白い。今は『霧越邸殺人事件』を読み終えて、『どんどん橋、落ちた』を読んでいる。それから何冊か、気になる本やおすすめされた本も買ってみた。本を読むというのは、まるで違う世界への扉を開けるようで、毎晩違う世界に旅立っている気分になれる。なんとも至福のひと時だ。

 そう考えると、十角館の殺人を購入した代官山蔦屋書店は、私に本当に良い出会いを与えてくれた。蔦屋書店は、本を販売するだけでなく、ライフスタイルを提案することも主軸にしている書店。今回私も、蔦屋書店のおかげで新しいライフスタイルに出会えた気がする。
サイト内検索