(株)アドバンテストは、4月に開催されたTouch Taiwan 2022で「Breakthrough Technology of Micro LED Testing for Mass Production」と題して講演し、マイクロLEDテスト技術を紹介した。その詳細をApplied Research & Venture Team Innovation Center Groupリーダー兼Japan Labリーダーの長谷川宏太郎氏に聞いた。
―― 開発の背景から。
長谷川 「マイクロLEDのテストに劇的な変化を及ぼす手法」を念頭において開発に着手した。大量生産に適したテスト技術の実現を目指しており、現状で技術の確度が高まり製品化が見える状況になった。
当社は、データ・プラットフォームをベースに、当社および提携企業の先進的なクラウド製品とサービスを組み合わせるACS(Advantest Cloud Solutions)エコシステムの提供を目指している。本件のテスト手法を軸に、マイクロLEDでのエピウエハーからパネルまでの製造・テスト工程を包括したソリューションとしても開発を進めてきた。
―― テストシステムの構成について。
長谷川 現在は個別に試験されているEL(エレクトロルミネッセンス)試験、ダイオード特性試験を一括で完結できる独自の高速テストソリューション「PEMPテスト」を開発し、これをオールインパッケージで提供する。すでに顧客へもインストール評価を行いつつ、当社でも顧客からの評価依頼を受けている。
本システムは、①電気特性を見る当社製の計測システムとソフトウエアライブラリー、②プローバーと搬送系、③光学測定用のPEMP測定ユニットで構成される。②は米フォームファクターと協力し開発している。また、先ごろ台湾市場に上場したプレイナイトライドと共同で評価を行っている。一方、エンジニアリング用途としてはトプコンテクノハウスとも協力して開発を行った。要求にあわせた構成要素の変更も可能となっている。
―― テストの概要は。
長谷川 スタンドアローンを組み合わせた既存のテスト体制に比べて、テストコストを90%以上改善できるめどが立ってきた。テストするマイクロLED素子(チップサイズやパッド形状など)によって異なるため一概に言えないが、1工程で完結できるようにし、発光色を問わず8インチまで対応可能で、実際の生産に使っていただけるソリューションだ。
―― 工程を具体的に。
長谷川 EL試験の時間短縮を図った。素子を1つずつ計測するため時間を要するうえ、電極が小さいためコンタクトも難しいからだ。通常はカメラや積分球を組み合わせて計測するが、アドバンテスト独自の手法により、面で多数個同時に高速計測できる仕組みを開発した。この際、隣接光の混ざり込みなどライトリークが問題になるが、これを解決するめども立てた。
またプローバーや搬送系、小さな電極にコンタクトできるMEMSプローブカードなどに関して提携先からカスタム品を提供していただき、テストライブラリーなどをインテグレーションして測定の容易性とスループットの向上を図った。I-V特性を見るダイオード特性試験では、現状128個までの同測が主流だが、1000個を超える同測も対応可能とした。
―― オプションも用意していますね。
長谷川 波長シフトを無くすにはLEDウエハー面内の均一性が重要だが、これを計測して成膜工程にフィードバックできるようなテストも提供可能だ。また、発光強度や波長以外にも各種光学パラメーターを測りたいという要望もいただいており、これにも対応しつつある。
―― 今後の展開は。
長谷川 現在、複数企業のウエハーによる実証段階にあるが、さらに立ち上げていく動きを加速したい。生産拠点で使用するには、使いやすさのさらなる向上も不可欠だ。パートナー企業との連携を深め、工程のつなぎや他の製造装置との連携も模索していく。難しい課題もあるだろうが、こうした取り組みは当社の得意分野でもある。
加えて、本システムを使って評価していただける顧客をさらに広げ、ともに立ち上げを目指したい。本件は主にLEDウエハーの発光強度や電気特性に関するテストシステムだが、LEDドライバーICなど周辺関連企業とも連携していき、次世代ディスプレー技術として確立されるために総合的にサポートしていきたい。
(聞き手・特別編集委員 津村明宏)
本紙2022年9月15日号8面 掲載