電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第489回

(株)ジャパンセミコンダクター 取締役社長 川越洋規氏


ファンドリー事業3割に
23年度に生産能力を1.8倍

2022/8/26

(株)ジャパンセミコンダクター 取締役社長 川越洋規氏
 東芝・半導体事業をルーツに持つ(株)ジャパンセミコンダクター(岩手県北上市)のファンドリー事業が拡大期に入っている。2016年4月発足後、足元の半導体市況の追い風にも乗り、東芝向けの半導体供給もフル稼働が続く。生産能力の拡大にも積極姿勢で臨む同社社長の川越洋規氏に、足元の市況や今後の事業戦略を聞いた。

―― 一部で半導体市況が弱含んでいますが、足元の事業環境は。
 川越 確かに、PCやスマートフォン向けなど民生分野向けの製品はトーンダウンしているものもあるが、当社では車載向けをはじめ、産業機器向け、モーター制御向けなど旺盛な需要が継続している。アナログICやパワー半導体の需要が強く、22年度を通じて高水準の生産を見込む。

―― ファンドリー事業も拡大傾向にあります。
 川越 当社は東芝向けに製品供給を担う一方、ファンドリー事業を手がけている。ファンドリーは生産数量ベースで全体の3割まで拡大してきている。旺盛な需要が継続しており、顧客は国内外で十数社にのぼる。1年前に比較して数量ベースでは7割も増えている。特にアナログやパワーデバイス向けの受注が好調だ。
 一方で、親会社である東芝デバイス&ストレージ向けの生産も拡大している。1年前に比較して2割程度生産量が拡大している。

―― 注力する製品を教えて下さい。
 川越 車載、モーター制御系などのアナログICをはじめ、白物家電向けなどのMCU、複合機・バーコード向けなどのCCDリニアイメージセンサー、産業機器・スマホ向けなど各種のディスクリート製品を展開している。
 岩手事業所の主力製品はリニアイメージセンサーで、全体の4割を占める。同センサーは、市場で70%もの圧倒的なシェアを誇っている。ディスクリート製品、車載向け製品は主に大分事業所で生産している。車載向け製品の構成比は3~4割に上っている。品質面では競合他社に絶対に負けたくはない。高品質のものを競争力のある価格で提供していく。

―― 各拠点の生産能力・プロセスは。
 川越 岩手事業所は8インチウエハー対応で、プロセスは0.35μmが主体である。大分事業所も8インチで90nmまで対応しているが、主流は0.13μmだ。両方合わせた月産能力は10万枚だが、大分が生産能力で岩手を上回っている。

―― 生産拠点の稼働状況について。
 川越 大分の6インチラインは今年3月で生産を止め、8インチラインに一本化している。足元は生産が逼迫しており、現在も大分で能力増強に着手している。旺盛な需要に対応して22年度も前年度並みの100億円強を投資する。23年度も投資を継続、21年度4~6月比で1.8倍まで生産能力を拡大していく計画だ。
 問題は製造装置の納期で、延びる一方となっており、機種によっては2年もかかるものがある。とにかくタイムリーにラインを立ち上げられるように、できるだけ早めに装置の発注を急ぐようにしている。

―― 半導体部材の値上がりなど、製造コストの上昇リスクへの対応は。
 川越 半導体を製造するための主要部材については、調達先と長期の供給契約を結び影響を抑制している。しかし、最近頭が痛いのは電気代の上昇などのエネルギーコストの急上昇だ。自助努力で生産効率の改善などにより吸収できる部分は吸収するが、それでもダメな場合は顧客側に値上げを受け入れてもらう交渉もしないといけないだろう。

―― 1月の大分・宮崎地方を襲った地震では大分事業所の生産が止まりました。
 川越 BCP(事業継続計画)対応に抜かりがあってはならない。今回の地震では予備在庫が手薄であった拡散炉工程の被害が大きく、現在対応策を実施中だ。万が一のため、予備の石英管などの部材の調達を進めている。来年のメンテナンス時期に合わせて地震対策をさらに推し進めたい。なお、岩手ならびに大分事業所では、プロセスの約8割は共通化しており、BCP対策の手も打ってある。

(聞き手・特別編集委員 野村和広)
本紙2022年8月25日号1面 掲載

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