(株)日陸(東京都千代田区)は、化学品をはじめとする危険物の物流に特化し、ISOタンクから多様な小型特殊容器のリース・販売、国内・国際輸送、倉庫事業、タンクヤード事業のほか、化学品物流に関わる多くの機能をもって事業運営を行っている。2022年10月には、社名をこれまでブランド名として用いていた「NRS」に変更。統一ブランドとしてグローバルに展開することで、さらなる事業拡大を図る。代表取締役社長COOの戸木眞吾氏に足元の状況や今後の物流事業の戦略を伺った。
―― 社名変更の背景は。
戸木 当社は1946年に「日本陸運産業」として創業し、08年に現在の「日陸」に変更し事業を展開してきた。21年10月からは30年までの長期経営計画達成に向けた最初のステップとして新中期経営計画「NRS 2024」をスタートした。世界の化学品物流において、これまで以上にグループの一体化を強化し、よりグローバルに貢献していくため、商号を「NRS株式会社」に変更することに決めた。
―― 足元の状況は。
戸木 ロシアによるウクライナ侵攻や上海のロックダウンの影響から、国際輸送の需要は減少傾向にあるが、運賃などの物流費は上昇している。こうしたなかでも、化学品・危険物に特化した物流企業として、半導体や電池をはじめとする成長産業の需要を取り込み、22年9月期も経常利益ベースで前期比8%の成長を達成できる見通しだ。
―― エレクトロニクス分野の状況は。
戸木 用途が多岐にわたっているので、正確な切り分けは難しいが、当社の売上構成比は半導体関連で15%前後、電池・冷媒関連で10%弱とみており、エレクトロニクス産業向けで全体の4分の1を占めるところまで成長している。ただ、こうした産業別分析もシステム化により把握できるようになってきた。従来は荷主ベースやエリアベースでしか分類しておらず産業別に需要を把握していなかったが産業別マーケティングの機能を持ち、市場分野をセグメント化して多角的に需要動向を分析できるようになってきている。
―― 具体的な施策は。
戸木 グローバルで半導体産業に対する需要が増すなかで、ストックポイントとなる倉庫や実入りISOタンク保管の整備に力を入れている。国内では高純度ガスなどに対応した倉庫を新設するほか、海外では台湾でも倉庫の新設を進める。台湾ではこれまで台中エリアに危険物倉庫を保有していたが半導体工場の集積化が進んでいる台南エリアにも拠点を構える。また、24年の開設を目指し、大手半導体メーカーが新工場の建設を進めている米アリゾナ州でも倉庫の新設を予定しているほか、ベトナム・ハノイ近郊に倉庫を設置し、すでに稼働している。
―― デジタル化にも取り組んでいます。
戸木 DX化に取り組んで、すでに3年目に入っているが、新たな付加価値提供に大きく貢献してくれている。物流サービス機能と顧客に役立つKPIなど物流データの提供、それにソフトウエアを組み合わせることで、最適な物流DXの実現を目指しており、危険物物流に特化したプラットフォームサービスの提供を行っている。
また、人材育成にも力を入れている。当社のような危険物物流のサービスは危険物取り扱いや法規制に対する高度な知識が求められる。これについては従来から行っている。そのうえに求められているものは、次世代に向けた人材の育成だ。さらにグローバルに通じるリーダーとなる人材を育てていくため人材育成を指導する専任顧問を置き、各社内研修や海外研修などさまざまなプログラムを提供している。システムや人材教育などの無形資産への投資には今後とも重点を置く。
―― 今後の目標を。
戸木 当社は21年に30年までの長期経営計画を策定しており、経常利益ベースで国内事業を21年9月期比で2倍強、海外事業を3倍強に引き上げ経常利益率12%の達成を目標に掲げている。さらなる拠点の拡充やDX化を通じてこれを達成し、さらなるグローバル化を加速していきたい。
(聞き手・編集長 稲葉雅巳)
本紙2022年8月18日号8面 掲載