オミクロン株(BA.5)、サル痘、インフルエンザ(主に欧米)など、感染症にまみれた夏を迎えている。鬱屈とした社会環境だが、長崎ちゃんぽんの「リンガーハット」と、讃岐うどんの「丸亀製麺」から夏メニューの試食会に招かれて、元気と活力を頂戴したので報告する。
リンガーハットは、長崎ちゃんぽん専門店「リンガーハット」で、「夏野菜と豚しゃぶ冷やしちゃんぽん」(890円)を7月4日から販売開始した。同メニューは、夏野菜など全11種類の国産野菜と豚しゃぶを、冷たいスープで食べる冷やしちゃんぽん。白いスープは、意外にも豚骨味を感じさせず、ココナッツジュースのような味わいだ。満載の夏野菜は栄養価が高く、パプリカやカボチャ、ミニトマト、コーンなど色鮮やかで見た目も楽しい。豚しゃぶは、ビタミンB1を多く含み、夏バテ予防や疲労回復に効く。感染症への抵抗力もつくのではないかと活力を得た気になった。試食会に臨席した代表取締役専務の福原扶美勇氏は、新メニューについて「出来栄えは200点と我々は思っている。ただし、お客様によってはいろいろな評価があるだろうから最低でも100点を付けたい。1店につき20杯以上売れれば大当たり」と述べ、実は「リンガーハットでは、通常の熱い長崎ちゃんぽんの人気が一番高い。努力して新メニューを開発しても、熱い通常の長崎ちゃんぽんよりも売れるメニューが出現したことはない」とも明かした。リンガーハットは、7月22日に60周年を迎え、新メニュー企画の第2弾を秋にも準備している。応援したい。
讃岐うどんの「丸亀製麺」は、夏季限定の「こく旨豚しゃぶぶっかけうどん」「すだちおろし冷かけうどん」のほか「丸亀うどん弁当」「豚しゃぶおろしうどん弁当」「なす天おろしうどん弁当」「いわし天うどん弁当」の試食会を7月中旬に開いた。同社の夏うどんは、暑い夏に「涼」を感じる、つるつるとした“のど越し”と“コシ”のある冷たいうどん。店内製麺、洗いと締め、徹底した温度管理による冷たい麺とだしにこだわる。「こく旨豚しゃぶぶっかけうどん」は、やわらかい豚しゃぶをにんにくの効いた特製旨だれと和え濃厚な味わいをトッピングし、玉ねぎとシャキシャキ食感の水菜にレモンを添えて清涼感を加え、暑い夏でも箸がどんどん進む。感染症への抵抗力まで付いたように感じ、勇気が沸く味だ。「すだちおろし冷かけうどん」は、徳島県産の“すだち”丸ごと1個をのせ、目にも涼やかなみずみずしい“おろし”を合わせてトッピングしさっぱりした味わい。
丸亀製麺は、夏商戦前半の6月にも「鬼おろし肉ぶっかけうどん」「鬼おろし鶏からぶっかけうどん」「鬼おろし豚しゃぶぶっかけうどん」「あさり冷かけうどん」「青唐おろしぶっかけうどん」を提供しており、6~7月にかけての夏メニューへの取り組みが半端ではない。「鬼おろし肉ぶっかけうどん」と「鬼おろし鶏からぶっかけうどん」は、女性客からも大人気になっているという。同社も秋に、改良型メニューを市場投入する予定と、新商品の開発に余念がない。
丸亀製麺とリンガーハットは、まったく異なる種類の外食チェーンに見えるが、試食会での取材によって、実は競争していることがわかった。リンガーハットの関係者に、競争相手はどこかと尋ねると、意外にも「『丸亀製麺』を意識している」と答える。両者はSCのフードコートへ必ずと言ってよいほど出店している人気店で、フードコートの同じ床で競争しているのである。商品で直接競合するわけではないのだが、フードコートを訪れる客が自店へと足を向けてくれるように考える中で、意識してしまうのだという。フードコートでは、長崎ちゃんぽんと、讃岐うどんは意外にも競い合っているのだ。
新型コロナ感染症の第7波により、混雑した場所へ出かけるのがはばかられる夏であるが、客の少ない時間帯に涼しいSCのフードコートへ赴き、長崎ちゃんぽんと讃岐うどんの熱き戦いを、冷たいメニューを介して味わいに行くのも新しい資本主義への参加の仕方になるのかもしれないと思った。