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第485回

TOTO(株) 上席執行役員 セラミック事業部長 宮地淳氏


静電チャック中心に事業拡大
新工場稼働で生産性向上

2022/7/29

TOTO(株) 上席執行役員 セラミック事業部長 宮地淳氏
 TOTO(株)(北九州市小倉北区)は、衛生陶器など水回り機器を主力事業とする一方、半導体製造装置の主要部材である静電チャックも展開し、同分野では高い市場シェアを保有するなど、全く異なる側面を持っている。半導体需要の拡大に伴い静電チャックが含まれるセラミック事業の売上規模は大きく拡大し、利益面での貢献も大きく同社が展開する事業のなかでも注目領域の1つとして内外から関心が高まっている。セラミック事業部長を務める宮地淳上席執行役員に現況や今後の見通しについて伺った。

―― 改めて、セラミック事業の概要から教えて下さい。
 宮地 衛生陶器で培った成形・焼成技術をベースに、セラミック事業を展開している。大きく分けて4つの製品を展開しており、半導体製造装置用静電チャック、AD(エアロゾルデポジション)法を使ったセラミックス膜、FPD製造装置などに使われる大型構造部材、ボンディングキャピラリーだ。なかでも静電チャックが主力製品でエッチング装置や成膜装置向けを中心に事業が拡大している。

―― 売上規模について。
 宮地 2021年度実績におけるセラミック事業の売上規模は前年度比1.5倍の301億円、営業利益が同5.1倍の93億円と大幅な増収増益を達成した。半導体設備投資の拡大に加えて、これまでのインストール台数をベースとした交換需要も事業拡大に貢献している。

―― 交換需要拡大の背景は。
 宮地 3D-NANDに代表される高アスペクト比のエッチングアプリケーションが増えてきたことで、エッチング装置の高出力化が進んでおり、チャンバー内部のパーツの消耗が激しくなっている。結果、交換サイクルが従来に比べて早まっており、これが需要拡大につながっている。静電チャックの年間市場規模のうち、半分を超えるレベルで交換需要が存在しているのではないか。新規需要は設備投資動向によって需要が大きく左右されるが、交換需要は工場稼働をベースとしているので、安定した需要が期待できるのも貴重だ。

―― セラミック事業では、利益率も大きく改善しています。
TOTOファインセラミックスでは新工場が稼働開始
TOTOファインセラミックスでは新工場が稼働開始
 宮地 いくつかの理由があるが、新工場の稼働開始によって生産性が向上したことが大きい。静電チャックを生産しているTOTOファインセラミックス(株)(大分県中津市)で建設を進めていた新工場が20年12月から稼働を開始しており、工程の最適化など生産リードタイムの短縮を図っている。

―― 今期の見通しは。
 宮地 引き続き旺盛な需要をもとに、22年度のセラミック事業は売上高が前年度比39%増の418億円、営業利益が同50%増の140億円を計画している。現在の中期経営課題の期間内では、23年度に売上高245億円を計画していたが、すでにこれを上回る水準となっている。一部最終製品の需要減退なども見受けられるが、中長期的な成長トレンドは変わっておらず、我々もそれに備えて事業・生産体制を構築していく。また、静電チャック以外の製品展開にも引き続き力を入れていく。

―― 期待している分野は。
 宮地 AD部材がその筆頭だ。従来、セラミックは焼き固めることによって作られるのが一般的だが、このAD膜はサブミクロンレベルのセラミック微粒子を常温のガスに混ぜて、ノズルを通じて高速に吹き付けることで緻密な膜を形成することができる。微細化の進展に伴い、パーティクルの管理がより一層厳格になっており、このAD膜は現在、半導体製造装置の内部部材のコーティング用途として、特に要求の厳しい先端ロジック分野を中心に採用が伸びている。

(聞き手・編集長 稲葉雅巳)
本紙2022年7月28日号8面 掲載

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