ネクスペリア(オランダ・ナイメーヘン)は、2017年にNXPのスタンダード・プロダクト事業部門がスピンオフして独立してから22年で5周年を迎えた。汎用品からパワー半導体までさらなるビジネス拡大を推進している。ネクスペリアの日本支社(東京都千代田区)設立時から支社長の任にある国吉和哉氏に、現況、最新の製品ラインアップ、増強投資動向、日本支社としてのトピックなどを幅広くお聞きした。
―― 21年は好業績でした。
国吉 全社売上高は前年比49%増の21億ドルを達成できた。当社は汎用品の比率が高いため、自動車の電動化、産業機器向けの投資回帰、コロナ禍のリモートワークに伴うパソコンやスマートフォン(スマホ)需要、ガス・石油高騰に伴う太陽光発電など再生可能エネルギーまであらゆる市場で需要が強含みだったことが奏功した。年間生産数量も21年には17年比42%増の1000億個まで拡大した。ただし、当社も需給逼迫の状況が継続しており、22年内は半導体不足が続くとみている。
―― 現状の製品概要は。
国吉 バイポーラ・トランジスタ、ダイオード、ESD保護、アナログ・ロジックIC、MOSFETの構成比率が高く、GaN FETも展開している。そして今後、IGBT、SiCパワー半導体、アナログ&パワーマネジメントICも新規拡充していく予定だ。製品数は1.5万個に上り、毎年800種類の追加拡充を実行している。
―― パワー半導体は積極拡充の印象です。
国吉 現状ではシリコン(Si)ベースの200V以下品が中心だが、21年から当社内にIGBT事業部を新設し、高耐圧品開発が始動している。また、GaN FETは第2世代650V品をすでに上市済みであり、22年内にはパッケージを既存のTO-247から面実装タイプのCCPAKへシフトした次世代品もリリース予定だ。さらにSiC品(650V帯、1200V帯)の開発も進めており、近くダイオード品の量産開始を、次いでMOSFET品投入を計画している。これにより、低耐圧~高耐圧まで全網羅が実現する。
―― GaNでは日本の京セラ関連会社との協業も発表されました。
国吉 22年5月に、EV(電気自動車)向け車載GaNパワーモジュールの共同開発でKYOCERA AVX社とパートナーシップを締結した。AVX社の高出力システムに最適化されたパッケージ技術と当社GaNデバイスとのシナジー効果を期待している。
―― 生産体制強化も待ったなしですね。
国吉 当社では30年売上高100億ドル達成を全社目標に掲げており、目標達成に向けて積極投資を進めている。21年は全社売上高の10%程度(2億ドル程度)を、22年以降は毎年同10~15%程度を投じていく計画を遂行している。前工程では、当社の親会社であるWingtech Technologyの株主が臨港(上海)工場で12インチウエハー新工場建設を進めており、24年ごろまでに40万枚の生産を目指している。
主にダイオード、バイポーラ・トランジスタの生産を担う独ハンブルク工場および英ニューポートでは8インチの能力増強を、英マンチェスター工場では6インチから8インチへのシフトを始めている。なお、独ハンブルク工場ではGaN FETへの投資を行っている。また、後工程も東莞工場(中国)、セレンバン(マレーシア)、カブヤオ(フィリピン)を増強中であり、マレーシアには新たに建屋建設を進めている。
―― 日本については。
国吉 22年春に米テキサス州ダラスに新デザインセンターを新設したが、日本でも21年末に大阪、大分に新デザインセンターを開設した。同センターでは特にアナログICを中心にエンジニア強化を進めている。大阪、大分ともに22年末にはフロア面積の広いオフィスへの移転も予定しており、本格展開を図っていく。また、日本支社としては、コロナ禍で常態化した時間や場所を選ばない効率化を今後も重視していく。
―― 今後の展望を。
国吉 半導体不足のなか、自社工場生産により先々の需要を見据えた柔軟な微調整を図れたことで、お客様との信頼関係をより深めることができた。また日本は、車載や産業機器関連の需要が堅調な地の利を活かし、世界で豊富な採用実績を持つ当社製品群を拡販していきたい。日本国内では、顧客サポートを充実させるべく、従来どおり販売代理店4社と連携を図っていく。
(聞き手・高澤里美記者)
本紙2022年7月14日号1面 掲載