CMP・接合ファンドリー最大手の(株)D-processは、CMP工程の受託加工を起点にめっきや接合といった他分野にも進出、近年急成長を遂げている。高い技術力をベースに、顧客にプロセスを提案する主体的な取り組みによって、他の企業とは一線を画す独自のビジネスモデルを構築してきた。5月からは東京・北赤羽に設立した新工場への移設作業を開始、クリーンルームも大幅に拡張され、さらなる業容拡大に向けた準備を着々と進めている。同社で技術本部長を務める佐藤覚取締役に足元の状況や今後の事業計画について伺った。
―― まずは新工場への移設作業の状況から教えて下さい。
佐藤 神奈川県大和市に本社工場を構えていたが、業容拡大に伴いクリーンルーム(CR)が手狭になっており、本社および第2工場の製造装置を集約し、さらに拡張スペースも設けるかたちで新工場用地を探していた。21年に北赤羽に新工場の立地を決め、今年5月から徐々に移設作業を始めている。
―― 新工場の概要は。
佐藤 1階部分がCRフロア、2階部分が執務エリアで、CRのフロア面積は従来の7倍弱に拡張されている。また、将来的には2階フロアの一角もCR化して、短納期対応や顧客へのプロセス移管サービスである「テクニカルトランスファー」部門を今後広げていければと思っている。また、執務スペースについても大和工場では人員拡充によって、従業員のデスクを確保するのも苦慮していたが、フロア拡張により、この環境を大きく改善することができている。
―― 今後の設備移設のスケジュールについては。
佐藤 一部量産案件は顧客からの認定を得る必要があるため、段階的に移管を行うことになりそうで、当面は北赤羽の新工場と大和工場を並行して稼働させる必要があるが、年内にはすべて完了する見通しだ。
―― 会社としても新体制に移行しました。経営方針に変化は。
佐藤 創業者であった土肥氏が退任し、新体制に移行したが、基本的な経営方針は変える必要はないと考えている。当社の飛躍のきっかけとなった通信系デバイスに次ぐ新たな事業の柱の育成に向けて現在力を入れているところだ。具体的にはパワー半導体、化合物半導体、そしてハイブリッドボンディングの分野で新たな芽が育ってきており、期待している。
―― ハイブリッドボンディングは将来性が高そうです。
佐藤 新たな接合アプリケーションとして、期待されているのがC2W(Chip to Wafer)の分野だ。HBM(High Bandwidth Memory)などの積層型メモリーのほか、光デバイスやマイクロLED、パワー半導体などで国内外から多数の引き合いを得ている。C2W関連は20年1月に対応設備の導入を実施し、本格的に事業を開始している。大手海外顧客を筆頭に、試作開発ならびに一部で量産案件の獲得にも成功している。
―― 今後の設備投資は。
佐藤 引き続き、積極的な設備投資は行っていく姿勢は変えておらず、必要な製造装置をタイムリーに手当てしていければと思っている。まず、300mmウエハーに対応したCMP装置の導入を決めているほか、ハイブリッドボンディングのニーズに応えるプラズマ接合装置の追加導入も行う。また次世代の超平坦化ニーズに対応したイオントリミング装置も増設して、顧客の要求に応えていく。
(聞き手・編集長 稲葉雅巳)
本紙2022年7月7日号12面 掲載