商業施設新聞
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No.862

イオンタウンの次なる戦略


若山智令

2022/6/28

 ショッピングセンターは時代とともに様々な形に変化し、常に消費者を楽しませてくれる。世間のニーズを読み取り、その地域に必要なテナントや機能を考え、それを提供してくれるデベロッパーの努力は我々の想像を超えるものだろう。先日取材させてもらったイオンタウン(株)もそんなデベロッパーの一つで、加藤久誠社長の「全国どこでも同じという、平均的な施設はあまりつくらない。テーマやコンセプトを持った特色あるSCをつくっていく」という言葉には、イオンタウンの高い志を感じた。

 イオンタウンは全国に151の商業施設を展開するデベロッパーで、スーパーマーケットを核とした地域密着型ショッピングセンター(NSC)を展開している。例年4~5カ所で新設するほか、既存SCのリニューアルも積極的に行っている。また、同社はコロナ禍でも例年水準の業績を確保した。その要因に、NSCをメーンに事業展開をしているということが挙げられる。コロナ禍で多くのSCが苦戦を強いられる中、地域に根ざしたNSCは比較的好調で、イオンタウンに限らずNSCを展開するデベロッパーからは「コロナ禍でも業績は好調だった」という話をたびたび耳にした。

4月にオープンしたイオンタウン旭
4月にオープンしたイオンタウン旭
 イオンタウンのNSCの特徴の一つに、地域・地元を大切にするというものがあると、個人的に感じている。例えば4月にオープンした「イオンタウン旭」(千葉県旭市)には、全19店を展開しているが、そのうち市内初出店が10店、地元企業(千葉県内に本社がある企業)が11店も出店している。そのエリアに新しいテナントを積極的に誘致していたり、地元活性化のために地元企業を多く導入したりと、地域とともに発展していくというイオンタウンの運営方針を表している。こうした取り組みが、結果的に「全国どこでも同じという、平均的な施設をつくらない」施設づくりにつながっているのだろう。

 加藤社長のインタビューは商業施設新聞の2022年6月21日号に掲載しているが、このインタビューに書ききれなかったものとして、「今、イオンタウンは食、ヘルス&ウェルネス、コミュニティの三本柱をテナントの中心に据え、そしてこれらに関連する業種業態も積極的に展開していきたい」というテナント誘致の考え方を教えてもらった。食は食物販や飲食店を含めた利用者の食のニーズを満たすこと、ヘルス&ウェルネスは文字どおり健康、そしてコミュニティは地域交流だという。特にコミュニティにおいては、前述のイオンタウン旭で具現化した「おひさまテラス」がある。おひさまテラスは、公共施設の位置づけで、イオンタウンが指定管理者となって運営している地域交流施設。レンタルスペースやコワーキングスペース、キッチンスタジオ、ライブラリーなどがあり、ワークショップなどの各種イベントなどを開催することで人が集い、交流できる施設となっている。

 加藤社長は「おひさまテラスの反響は非常に高く、年間利用目標数を数カ月で達成してしまうような勢いだ。こうした地域交流施設は機会があればどんどん導入していき、当社SCの特徴の一つにしていきたい」と話す。イオンタウンを地域交流の拠点にすれば、自然と人が集まり、賑わいが生まれる。こうすることで長くその地域でSCが必要とされ、地域とともに発展していけるのだろう。
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