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第480回

東レエンジニアリング(株) 常務取締役 メカトロファインテック事業本部長 林睦氏


21年度は増収増益、全領域が好調
高精度ボンダーで大型受注

2022/6/24

東レエンジニアリング(株) 常務取締役 メカトロファインテック事業本部長 林睦氏
 東レエンジニアリング(株)のメカトロファインテック事業本部は、半導体・ディスプレー関連、LiB(リチウムイオン電池)を主力分野に製造装置の開発・製造・販売を手がけている。これまでは液晶パネル向けスリットコーターなどが主力だったが、近年は半導体実装用ボンダーや半導体検査装置などが拡大、事業ミックスが変化しつつある。足元の受注状況も好調ななか、メカトロファインテック事業本部を統括する林睦常務取締役に現況および今後の見通しについて話を伺った。

―― 21年度業績の振り返りからお願いします。
 林 21年度は2事業部・3関係会社のうち、4つの事業セグメントで増収増益を果たした。売上高は一部期ずれした案件もあり、若干の減収となったが、受注高は前年度比で約1.8倍と大きく伸びた。ディスプレー関係は一部特需があったほか、半導体関連はここ数年の取り組みが奏功しており、当社にとっても大きな事業の柱となってきている。
 また、増収に加えてコロナ禍で進めた収益改善策も寄与して粗利益率が3ポイント以上改善したことにより、事業利益が前年度の1.4倍に拡大したこともポイントの1つだ。

―― 主力のディスプレー分野について。
 林 中国液晶投資はすでにピークアウトしており、投資案件は以前に比べて小さなものになってきたが、それでも継続的に装置への引き合いが続いている。今後はトータルソリューションで顧客への提案を進めているマイクロLED分野での事業拡大に期待している。台湾で採用が先行しているほか、中国でも大学の研究機関で一貫ラインの採用が決まっている。

―― 半導体関連については。
 林 FC(フリップチップ)ボンダーでは、大手顧客からデータセンター向けに現状約100台のフォーキャストを得ている。すでに数十台規模で納入を開始しているが、今後の需要に応えるために部品の先行発注を含めて計画生産にトライしている。また、チップレットなど次世代パッケージ分野でも当社のボンダーが活躍できる場面は多くあると考えており、その一環として「ハイブリッド接合技術開発」のテーマでNEDOプロジェクトに応募し、採択された。
 さらに、顧客側でチップ実装をパネルレベルで行う動きもあり、当社のTCB(Thermal Compression Bonding)工法を使ったボンディング技術の採用がより一層広がると期待しているところだ。

―― 検査装置分野は。
 林 光学式検査装置の「INSPECTRA」は、国内の半導体産業に対する補助金などを追い風に、顧客からの旺盛な受注が続いている。すでに21年度末までに8台、4~5月で約10台の受注を得ており、6月以降も複数台の受注が見込める状況だ。この分野においては、日本国内の市場で高いシェアを獲得できているが、海外市場はまだ開拓途上であり、現在は台湾、中国などのアジア市場、さらには欧州市場を開拓するために、現地デモルームの開設を急ピッチで進めている。

―― 今後の事業の方向性について。
 林 当社は事業ポートフォリオが広範でその全領域で事業が拡大する一方、社内リソースも限られているためにターゲットの絞り込みも必要だ。具体的には、「市場セグメントを細分化し自分たちが保有する差別化技術で40%以上のトップシェアを狙える分野」をターゲットとして定めている。また、生産面では、従来からファブレスの体制をとってきたが、これを一部見直して負荷変動のボトムラインまでの範囲内で内製化を行う体制を目指していく。

―― 将来に向けた事業の課題は。
 林 カーボンニュートラルへの関心が高まっており、顧客からのニーズも高まっている。このニーズにスピード感をもって対応し、サプライチェーンの中でしっかり貢献することが重要と考えている。カーボンフットプリントの最小化が、事業の上での競争の軸になるとみている。また、環境に配慮した装置の開発に取り組むことで、カーボンニュートラルに貢献できる分野を着実に広げていきたい。

(聞き手・編集長 稲葉雅巳)
本紙2022年6月23日号14面 掲載

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