商業施設新聞
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No.860

コロナ禍のバレンタイン催事


今村香里

2022/6/14

 チョコレートの原材料であるカカオは、スイーツ、食事、コスメなど様々な商品に展開が可能だ。百貨店のデパ地下に並ぶ食物販店から、チョコレートドリンクなどを提供するカフェスタイルの店まで、カカオを利用する業態は数多い。また、日本国内ではチョコレートの消費が伸びている。特に例年白熱するバレンタイン商戦は、百貨店催事を中心に一大イベントになっている。

 今年、百貨店のバレンタイン催事に足を運んだ。阪急百貨店の阪急うめだ本店では、コロナ禍で制限がある中でも多くの人がお目当てのチョコレートを求めて買い物を楽しんでいた。「全館バレンタイン」と称し、従来の催事スペースのほかに、全館に売り場を配置したため、従来よりも混雑を回避できている様子だった。人気のブランドは事前に整理券を配布したり、EC販売に力を入れたりと、コロナ禍でより一層買い物の仕方に変化が表れていると感じた。

 できたてが食べられると人気のイートインコーナーは感染対策のため設けられなかったが、焼き立てのフィナンシェの導入や、恒例のソフトクリームをカップで提供するなど「お持ちかえり」を強化したブースは反響を呼んだ。また、各階のカフェと連動した期間限定チョコレートパフェを販売し、この企画も反響が大きかったという。

 催事の担当者に話を聞くと、「自分へのご褒美」で購入する人が増えているそうだ。バレンタインは、おうち時間で少し贅沢なスイーツを楽しむ人、親しい人と久しぶりのカフェタイムを楽しむ人など、思い思いの“楽しみ”にバレンタイン催事を活用する人が増えている。もちろん、日ごろからお世話になった人に配るギフト需要もあり、「配ったり、一緒に食べたりとチョコレートをコミュニケーションのひとつのツールに加えて欲しい」と担当者。阪急うめだ本店のバレンタイン催事で初めての企画「コミューナルチョコ」では、食材の生産者と一緒に地元を元気にしたいという想いを持つ作り手をピックアップしており、「地域の人がチョコレートづくりでつながっていく様子が感慨深い」とも聞いた。

インスタグラムでは購入した商品のおしゃれな写真が1000件以上も投稿されていた
インスタグラムでは購入した商品のおしゃれな
 写真が1000件以上も投稿されていた
 また、とある一角のパネルを見ると、「#阪急チョコ写真部 でつながろう!」と記載があった。インスタグラムにおいて、会場やECで購入したチョコレートをハッシュタグで投稿し、贈る人・もらう人の両方が、チョコレートによるハッピーの輪でつながるようなコミュニケーションを目指しているようだ。フォトスポットもあり、SNS上でもバレンタインを楽しめる仕組みが広がっていた。

 コロナ禍では多くのことが見直されるようになった。コミュニケーションの重要性もその一つだ。バレンタイン催事を通じて分かったのは、コミュニケーションが消費を動かすということだ。変幻自在のチョコレートならではのあらゆる企画や商品で、これからも人の心を動かしてほしい。都心の商業施設ではまだまだコロナ禍による苦戦が続いているが、各館各様のイベントや企画で乗り切ってもらいたい。
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