2022年の韓国主要企業グループの総資産ランキングを眺めていたら、やはり半導体を手がける会社はとんでもなく強い、ということに気が付いた。このランキング表によれば、1位はサムスングループで、総資産額は483兆9188億ウォンであり、まさにぶっちぎりと言ってもよい強さなのである。
第2位にはSKグループがこれを追っているが、こちらは同291兆9689億ウォンとなっている。サムスンにはかなり差を付けられているが、重要なことは韓国の自動車企業として有名な現代グループの257兆8453億ウォンを抑えて2位に上がったことなのである。
電子デバイス産業新聞によれば、2021年のメモリー設備投資は前年比で3割近い成長率であった。サムスンはDRAMにもフラッシュメモリーにも強く、2兆円レベルの投資を今後も続けていく考えである。SKハイニックスもまた、1兆円以上の投資を断行していくと思われる。
ちなみに、この2社が半導体メモリーの世界2強となっているが、これに続く米国マイクロンも東広島に大型ファブの建設が噂されており、1兆円以上の新工場も実現するかもしれない。キオクシアもまた、四日市の第7棟、および岩手北上の第2棟に注力しており、数年間の計画ではあるが、1.5兆円以上を投入すると思われている。
メモリー半導体はいつでも拡大した時に必ず止まるという予測がされる。かつてはパソコンブームが終わればダメ、スマホブームが終わればダメ、と言われたものであるが、最近ではデータセンターの投資が急増しており、相変わらずメモリー半導体は足りないのである。そしてまた、汎用メモリーで勝たなければ、世界では勝てないという格言もあった。かつて日本企業が世界シェアの5割以上を押さえた時にも、やはり半導体メモリーで勝者となったのである。
最近では、東京大学およびTSMCのコンビネーションにより、三次元積層型のSRAMを開発し、DRAMの牙城を崩そうという動きが日本側にはある。これまたメモリーを制しない限り、日本の本当の復活はないとの考えが強いからである。
データセンターブームが終われば、またもやメモリーは下降するとの悲観的な見通しを立てる人たちがいる。ちなみに、いつでも暗い予想をしたがるアナリストや評論家が多いのには困ったものだ。
メタバース投資に期待がかかるが、インテルの目測によれば、コンピューティング能力だけで1000倍になるという予想もあるわけであり、もちろんマイクロプロセッサーはメチャメチャに増える。しかしそれに随行するように、メモリーも凄まじく跳ね上がっていく。
また、エッジコンピューティングになれば、スタンドアローン型の小型サーバーが街中に置かれ、道路上にも置かれるわけであるからして、これまたメモリー需要を加速するわけだ。車載向け半導体についても、まずはパワー半導体が急上昇するが、自動走行運転やAIと連動する超ハイエンド版に移っていけば、これまたメモリーを必要とする。要するに、どこまで行ってもメモリー、メモリー、メモリーなのである。
中国の半導体メーカーも、躍起になってメモリーの追い上げにかかっているが、そう簡単には追い付けないだろう。最先端の製造装置が、米国をはじめとする中国囲い込み勢によって抑えられているわけであるからして、やはり一気の急上昇は難しい。それより何より、最先端メモリーには優秀なプロセスエンジニアがどうしても必要であり、これを確保するのが難しい。
メモリー新ファブの設備導入スケジュールを見れば、どこまで行っても投資が止まらないことがよくわかる。これが国内の半導体製造装置メーカーに与える影響は、とんでもないものがあるだろう。半導体装置産業は、いまや1000億ドル超(現在の為替レートで言えば、何と13兆円)と巨大化しており、日本企業のシェアは4割くらいはあると思われる。メモリー上昇が続く限り、日本の装置企業への追い風は止まることはないだろう。
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泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2020年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。