沖電気工業(株)(OKI)では、4月1日から、社長執行役員に森孝廣氏が就任した。前社長の鎌上信也氏が代表取締役会長執行役員CEOとしてグループ全体の経営戦略を担い、新社長の森氏がCOOとして業務を統括する新たな体制により、意思決定を迅速化し、経営力のさらなる強化を図る狙いがある。
同社では、2022年度を最終年度とする中期経営計画において、「社会課題の解決を通じた持続的成長」を実現するための土台づくりとして、事業ポートフォリオの再構築、モノづくり基盤の強化、グループ共通機能のコスト改革などを推進しているが、依然として新型コロナの感染に収束の兆しは見えず、ウクライナ情勢がマクロ経済に与える影響も不透明な状況にあるなど、予断を許さないビジネス環境にある。
23年度からスタートする次期中期経営計画では「成長への舵取り」をテーマに掲げており、新社長の森氏が、どのような手腕でその成長を確かなものとしていくのかお話を伺った。
―― 12人抜きとなる大抜擢の人事であったとお聞きしています。就任の打診があった際の率直な感想は。
森 前社長の鎌上氏と接点はそれほど多かったわけではなく、就任の話をいただいた際は、まさに青天の霹靂。今でも何で私がという気持ちがある。
―― ご自身が仕事に向かうスタンス・心がけていることは。
森 私は、OKIに入社して以降、グループの(株)OKIデータ(21年4月にOKIと統合)において主にプリンター関連事業に携わってきた。様々なお客様へ営業にお伺いするなかで特に心がけていたのは、新規顧客の開拓だった。もちろん、既存のお客様へのサポート、しっかりとした営業活動は大切だ。しかし、単に継承されたものをこなすよりも、チャレンジ精神というか、新しいものを求める気持ちが非常に強い。次期中期経営計画を任されたということは、〝成長への舵取り〟を、チャレンジ精神をもって引っ張っていくことを期待されていると理解している。
―― どのようなOKIをつくっていきたいとお考えですか。
森 1つは、自由な企業風土づくりは心がけていくつもりだ。プリンターは民生向けがメーンであり、事業環境・ユーザーニーズへの迅速な対応が求められる。当時のOKIデータでは、「オープン・ドア・ポリシー」により、重要な経営会議の内容も社員に公開し、一般社員が役員と直接意見交換できる環境があった。これをすぐにOKI本社で導入することは難しいが、社員が楽しみながら仕事に取り組み、様々なことにチャレンジできる環境は整えていきたい。
―― 今後の成長を担うと期待している注目の技術・製品について。
森 成長市場に向けた独自技術の開発はとても重要だと認識しているが、そう簡単に唯一の独自技術を生み出せないことも理解している。ただ、技術開発で強く意識したいのは、国内市場だけを意識するのではなく、世界を見据えた開発だ。万人受けする技術・製品はすでに競合他社も展開している。どうやって違い(とがった技術・製品)を創り出すのか、もっと攻める意識をもって取り組んでいくことが重要だ。
加えて、グローバル拠点の機能強化、センスのあるマーケッターの育成などもOKIの成長に欠かせない要素であり、しっかりと推進していきたい。
―― 最後に、社内外へ向けたメッセージを。
森 OKI独自の製品開発・販売を強化していく一方で、パートナー様とWin-Winの関係によるビジネスの重要性も十分に理解している。ただ、当社をパートナーに選んでいただくには、やはり特徴ある技術・製品が不可欠となる。
長年、営業職として仕事をしてきたなかで、お客様に製品・技術を採用いただき、喜んでもらえたことが私自身の仕事に対する大きな原動力となっている。お客様やパートナーと「感動と共感が生まれる企業」、少し情緒的な言い方ではあるが、そんな企業を目指して取り組んでいきたい。
(聞き手・特別編集委員 津村明宏/清水聡記者)
本紙2022年5月12日号1面 掲載