商業施設新聞
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No.854

いつまで続くか一人勝ち


岡田光

2022/4/26

 名古屋駅から名鉄線に乗り換え、東岡崎駅に降り立った。1年半前に岡崎市が推進する街づくり「QURUWA戦略」を取材したので、周辺の施設状況などはある程度把握していたが、取材時間が朝早かったため、駅からタクシーに飛び乗って運転手に行き先をこう告げた。「戸崎町のイオンモール岡崎にお願いします」と。運転手は相槌を打って、すぐに車を発進させた。

 タクシーでイオンモール岡崎に向かう道中、運転手は岡崎市の色々な話を聞かせてくれた。例えば、東岡崎駅の北側にはかつて「ジャスコ岡崎店」や「松坂屋岡崎店」が営業していたが、1995年にイオンモール岡崎が開業したことで、ジャスコ岡崎店は94年、松坂屋岡崎店は2006年に閉店。そのため、岡崎市内で買い物を楽しむ時はイオンモール岡崎に行き、たまに「アピタ岡崎北店」を覗きに行くという。そのイオンモール岡崎も「西武岡崎店」が20年8月に閉店したが、直近でジェイアール東海高島屋が「ジェイアール名古屋タカシマヤ フードメゾン岡崎店」をオープン。「高島屋が入るのなら、イオンモール岡崎にもっと通い詰めたい」と運転手は語っていた。

大規模改装を完了した「イオンモール岡崎」
大規模改装を完了した「イオンモール岡崎」
 運転手がそう語るのもうなずける。取材後、実際にイオンモール岡崎内を歩いてみると、平日の朝10時でも多くの顧客が館内を歩いていた。もちろん、直近で実施した大規模改装の効果も絶大だ。イオンモール岡崎では20年10月から3期に分けて、専門店約110店を刷新する大規模改装を実施。1期で60店、2期で30店、3期で24店を刷新しており、3期では「コーチ」や「マイケル コース」といった海外ラグジュアリーファッションの出店や、「久世福商店」や「ザラメ」などの食物販ゾーンを構築した。そして、3月にはジェイアール名古屋タカシマヤ フードメゾン岡崎店が出店し、大規模改装のフィナーレを飾った。

 なぜ、イオンモール岡崎に地元住民も含め、多くの顧客が訪れるのか。それは三河エリアにショッピングセンターのような大型商業施設が少ないためだ。岡崎市、豊橋市、豊田市などの三河エリアはトヨタ自動車を中心とする自動車メーカーが本社を構える地域であり、人口は愛知県の他エリアに比べても多いが、大型商業施設はイオンモール岡崎やアピタ岡崎北店、「T-FACE」と数少ない。その代わりに、三河エリアではドミーやフィールコーポレーション、アオキスーパーといった地場スーパーの店舗がそこかしこに見られる。この地場スーパーが激しく競い合っているため、かのコスモス薬品も三河エリアでは4店の展開にとどまっている。また、地場スーパーは自社が展開する食料品に加え、ドラッグストアや100円均一ショップなどをテナントとして迎え、複合店を展開するケースが多い。そのため、食料品だけでなく、衣料品や飲食店などを揃えるSCは当然のごとく重宝される。だからこそ、イオンモール岡崎は三河エリアで一人勝ちを続けているのだ。

 その三河エリアにも、大型商業施設の開発機運が高まりつつある。三井不動産は20年に愛知郡東郷町に「ららぽーと愛知東郷」を開業したが、これに続き、安城市で新たな商業施設の開発を計画。岡崎市でもアウトレットモールの出店機会をうかがっている。イオンモールも23年春、豊川市のスズキ工場跡地に「イオンモール豊川」を開業する予定だ。これらの新しい施設がイオンモール岡崎を脅かす日が来るのか、それとも一人勝ちはまだ続くのか。百貨店が去った三河エリアであるが、今後の商業開発は注目していきたい。
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