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第468回

UTAC シニア・バイスプレジデント 日本法人 責任者兼セールス・マーケティング・事業開発担当 アシフ・チョードリー氏


21年度は70%の増収
部材逼迫は22年下期緩和へ

2022/3/25

UTAC シニア・バイスプレジデント 日本法人 責任者兼セールス・マーケティング・事業開発担当 アシフ・チョードリー氏
 シンガポールに本拠を置くOSAT、UTACは、2021年度に半導体の市場成長率を大幅に上回る高成長を達成した。22年度は市況の減速懸念など不透明感があるものの、プラス成長の持続を目指している。同社シニア・バイスプレジデントで、日本法人責任者兼セールス・マーケティング・事業開発担当のアシフ・チョードリー氏に話を聞いた。

―― 21年度の業績から。
 アシフ 当社の21年度の売上高は年初の予想を若干上回る成長率となり、前年度比70%増の14.7億ドルだった。年商10億ドルを突破するのは初めてだ。オーガニック(既存顧客)はWLP、MEMS、パワーデバイス、マイコンなど年後半を中心に非常に好調だった。また、特定デバイスメーカー向けビジネスは、スマートフォン(スマホ)やPC、タブレット向けのSiPが伸びた。日本の既存ビジネスならびに新規顧客も順調に伸び、前年度比58%増と好調に推移した。

―― 22年度の見通しは。
 アシフ 業界アナリストは22年の市場成長率を7~12%と予測している。ただ、21年10~12月期の当社主要顧客の在庫が増加しており、需要とウエハー価格にギャップが出てきているのが懸念材料だ。北米のインフレに起因する景気減速も注視される。当社では堅調な需要が続くと見込む一方、先行きには慎重な見通しを持っている。既存品ならびにSiPの成長を目指し、市場後退するようなイベントがなければ2桁成長を期待している。

―― サプライチェーン逼迫の状況と対応は。
 アシフ 21年はリードフレーム(LF)やサブストレートをはじめ、すべての部材や装置が長納期化した。足元ではLFやエポキシ樹脂の需給はやや改善している。装置は半導体不足が影響してリードタイムが長い状態が続いている。自動車市場を中心にパワーデバイスの需要が高止まりしているため、22年いっぱいは逼迫が続くのではないか。22年後半には半導体の需給がやや改善し、装置の納期も平常化に向かうと予想している。
 当社ではこうした状況のなかで、顧客やサプライヤーとの連携を密にした対応の重要性を学んだ。例えば、装置の納期をメーカーと連携して常にチェックし、やむを得ず遅延する場合は早期に通知してリスク軽減を図るなどの措置を講じた。また、生産拠点では新型コロナ感染リスクへの対応として従業員の在宅勤務やワクチン接種を推進するなどの感染防止策を講じた。一部拠点では操業に制約を受けたが、短期での回復を実現した。

―― 顧客と「テイク・オア・ペイ(TOP)契約」を締結するなどの措置を講じてきた。
 アシフ TOPは顧客の生産が確保したキャパに満たない場合にペナルティーが発生するが、生産キャパを確保する手法として要望が強い。多くの顧客は、21年に続いて22年も一部の重要部品でTOP契約を継続している。一部の顧客はTOP契約の代わりにキャパ確保をするために新規ビジネスを持ってくる「ビジネスアグリーメント」を結んでいる。これら契約は、キャパを確保するための方法として認知されてきたと考えている。

―― 設備投資について。
 アシフ 21年は約4億ドルの設備投資を実施し、QFNやWLPなど需要に対応するため積極的な能力増強を行った。タイ工場に隣接する建物を賃借したほか、シンガポールでウエハーバンピング拠点を取得した。22年も能力増強を図るが、分野で濃淡があり一部ではスローダウンもあると考えている。このため、投資規模は21年ほどにはならないのではないか。

―― 中長期的な能力増強の方向性は。
 アシフ ここ数年の市場成長にややピークアウトの気配があり、24~25年ごろまでは景気減速もありうるとして増産には慎重な構えだ。一方、長期的にみれば26年以降にミリ波や電気自動車(EV)、IoTのさらなる普及拡大など市場の成長は続くと考えている。

―― パッケージ開発の取り組みを。
 アシフ アレイパッケージ、MEMSとセンサー、イメージセンサー、WLP、バンピング、パワーデバイス、SiPが重点テーマだ。うち、バンピングでは欧州大手顧客のASIC向けにプラズマダイシングの適用を開始した。切断幅が小さく、チップ取れ数にメリットが発揮できる。パワーデバイスへの適用も予定している。パワーデバイスは、ローエンドデバイス向けにコストパフォーマンスの良いラインを設けたほか、21年末から同じくコスト力のあるテスト技術の適用も開始した。ハイエンドデバイスではCuクリップによるスタック、マルチクリップ構造、MISの採用、LFを厚くするといった取り組みを行っている。GaNパワーデバイスでは量産実績があるほか、顧客と共同でRF-GaN、SiCパワーデバイス向けも開発しており、23~24年以降の量産開始を見込んでいる。

(聞き手・副編集長 中村剛)
本紙2022年3月24日号1面 掲載

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