商業施設新聞
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No.849

ウクライナ料理を堪能、早い平和を


笹倉聖一

2022/3/22

 ウクライナとロシアの争いについて、外国で起きた他人事とは思えず、日本人として他国との安全保障を身近な問題として考える昨今である。ウクライナについては黒海の北部に位置し、鉱物資源が豊富な国という社会科の教科書程度の知識しかなかったので、新たな知識を得たいと思った。外務省のホームページによると、ウクライナ共和国の面積は日本の約1.6倍の60万3700km²、人口は4159万人(クリミア除く)、民族はウクライナ人(77.8%)、ロシア人(17.3%)、ベラルーシ人(0.6%)のほか、モルドバ人、クリミア・タタール人、ユダヤ人など。言語はウクライナ語(公用語)、ロシア語。13世紀以降に複数の国から占領された歴史を抱えている。現在の主要貿易相手国は、輸出入とも中国が最大(輸出14%、輸入15%)で、以下、輸出がポーランド(7%)、ロシア(6%)、輸入はドイツ(10%)、ロシア(8%)と続く。日本とは、ソビエト連邦が崩壊した後の1992年1月から外交関係を開設している。キエフ市と京都市、オデッサ市と横浜市は姉妹都市として交流している。

スンガリー新宿3丁目店の入り口
スンガリー新宿3丁目店の入り口
 同国の概略は少し理解できたが、文字上の情報だけでは満足できず、ウクライナの料理を食べに行くことにした。創業60年以上の歴史があり、ウクライナ、ロシア、ジョージア(グルジア)の料理を提供する「スンガリー新宿3丁目店」へ行き、ウクライナセット(4150円+税)を注文した。まず、ウクライナ前菜盛り合わせ(キャベツとビーツのウクライナ風ピクルス、ニシンのリエット“キエフ”風、茄子キャビア“オデッサ”風、イベリコ豚で塩漬けした自家製サーロ、スンガリー式紅鮭のマリネ)が運ばれてくる。前菜は冷たいのだがうまい。きめ細かな味で、日本料理をオリーブオイルで味付けしたような繊細な味わい。黒海の海風を感じさせる前菜で、紅鮭の赤身が美しい。前菜以上に、ほんのりとした甘みの黒パンが逸品であると感じた。

 次に運ばれてきたのは、トマト多めのウクライナボルシチ(牛肉とキャベツ、インゲン豆入り)。これも上品な味わいでうまい。サワークリームが入っており、バターを溶かしたような味わいが加わる。ボルシチはロシアではなく、ウクライナ発祥の料理なのだそうだ。3番目はゴルブッツイ(ウクライナ風ロールキャベツの煮込み焼き、トマトクリーム仕立て)だ。中に入っているロールキャベツは、中身の肉がやわらかくてうまい。ロールキャベツがウクライナ(ロシア)料理であることを今回初めて知った。

 食事の最後にロシアンティー(バラジャムと季節のジャムを添えたチャイ)を飲む。名称こそロシアンティーだが、ウクライナ、ベラルーシ、ポーランドまで含めたロシア圏で親しまれている紅茶で、日本でおなじみのイングリッシュティーよりも味が濃い。ロシアではジャムをなめながら紅茶を飲み、ウクライナではジャムを紅茶に入れて楽しむそうだ。この地域は茶を中心に文化圏ができているのである。コース料理は少し高額だったが、満足のいく味わいだった。こんなにおいしい料理を食文化として持つウクライナは良い国であるに違いないと確信した。今起きているウクライナでの悲劇が早く終わることを願うばかりだ。

 これとは別に、ベトラーブ ビストロ ジローというウクライナ料理専門店が東京都渋谷区にある。こちらは席数がそれほど多くなく、毎夜予約は満席状態とのことで、この原稿締切日までに食を味わうことが間に合わなかった。日本のウクライナ料理店は、国が悲劇に見舞われる中で、日本人による市民への応援の気持ちが加わって賑わっている。
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