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美濃加茂市の中部国際医療センター開院、地域の中核病院と最先端医療(2)


がん治療のメッカを目指しX線治療装置2台、23年に陽子線治療開始、BNCTも視野

2022/2/8

 1月にオープンした(社医)厚生会 中部国際医療センター(岐阜県美濃加茂市健康のまち1-1、Tel.0574-66-1100)では、がん治療のメッカを目指し、消化器がんセンター、肺がん治療センター、陽子線がんセンターを新設し、2台の放射線治療装置や最新の診断機器を導入した。

◆治療装置はTrueBeamとHalcyon

 放射線治療装置2台は、放射線治療棟(耐震構造のRC造り3階建て延べ4631m²)の1階、放射線科は入院外来棟(基礎免震構造のS造り10階建て延べ4万7761m²)の1階に設置されている。

 導入された放射線治療装置は、米国バリアン社製のTrueBeamとHalcyon。TrueBeamは、放射線治療で用いられる最上位の機種として、さまざまながんに対して正確な治療が可能で、また、呼吸で動く臓器(肺など)の治療に適しているという。サブミリメートルの精度により、コンフォーマルな治療をより正確に実施でき、バリアン社独自のMaestro同期制御システムにより、システムのシームレスな操作が可能となっている。

TrueBeam
TrueBeam
Halcyon
Halcyon

 Halcyonは、従来の機器よりも短時間で、正確にがんに放射線を当てることができ、頭頚部や骨盤内にある臓器(前立腺など)の治療に適しているとしている。次世代のデュアルレイヤーMLC(2段式マルチリーフコリメーター)を搭載し、質の高いIMRT(画像誘導による強度変調放射線治療)・VMAT(強度変調回転放射線治療)が可能であり、また、高速MLCの駆動により、治療時間の短縮に寄与する。

◆将来的にBNCT導入、超小型中性子線源想定

 さらに、放射線治療棟には、3番目の照射室を設置しており、将来的にBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)装置を導入する予定である。ホウ素を含む専用の薬液を点滴し、ホウ素をがん細胞に集めたうえ、体外から中性子線を照射し、中性子線がホウ素にぶつかると核反応を起こし、放射線(アルファ線とLi核)が発生する。この放射線は、体内では非常に短い距離(細胞1つ程度)しか飛ばないため、ホウ素を取り込んだがん細胞をピンポイントで破壊することができる。照射する中性子線は、非常にエネルギーが小さく、人体への影響はほとんどない。

 BNCT照射室は、開発が進む非常にコンパクトな中性子線源を備えた装置の設置を想定している。

 なお、放射線治療棟の2階は病理検査、機械室、3階は機械室となっている。

BNCT(予定室)
BNCT(予定室)
建設中の陽子線がん治療センター
建設中の陽子線がん治療センター

 
 
◆世界初、バリアン社製陽子線治療装置を導入へ

 2023年稼働予定の陽子線治療棟(耐震構造のRC造り地下1階地上2階建て延べ1412m²)には、米国バリアン社製の陽子線治療装置ProBeamを導入する。導入する装置は、バリアン社製陽子線治療装置の1号機、世界初の装置となる。がん病巣を集中的に破壊し、周囲の正常組織への副作用を最小限化することで、体への負担軽減に寄与し、QOLを大切にしたがん治療に役立つとしている。

◆化学療法は合計25床、がんサロンを併設

 外来入院棟2階には、通院治療センター(化学療法24床、化学療法個室1床)、患者図書館、がんサロン、検体検査、薬剤などを設置している。化学療法は、テレビなどを見ながらリラックスして受療が可能である。

◆ゲノム医療のPleSSision検査提供

 厚生会では、17年11月に旧木沢記念病院でがんゲノム診断/医療センターを開設し、18年4月には、厚生労働省よりがんゲノム医療連携病院に指定を受けた。それ以来、慶應義塾大学病院腫瘍センターゲノム医療ユニットと連携し、PleSSision検査(自由診療)を全国で3番目、中部地方で初めて導入し、提供している。がんの発症に関わる遺伝子変異の検出率は約92%、効果的な治療薬の選択につながる遺伝子変異の検出率は約59%としている。また、自施設内に次世代シークエンサーを備え、PleSSision-Rapid検査を実施している。国際臨床検査成績評価プログラムのCAPサーベイの認証を受け、高信頼性のデータを提供している。

 同センターでは、「がん」とは、細胞の中でさまざまな遺伝子の異常が積み重なることで発症する病気であり、近年、その遺伝子の異常を標的にする薬が開発されているが、実は、遺伝子の異常は人それぞれであり、必ずしも効果が期待できるとは限らないとし、がんの遺伝子を検査し、原因がん遺伝子が明らかになるメリットとして、(1)がんの個性(原因)が判る(遺伝子の異常が明らかになる)、(2)国内の治療薬の情報が得られる(治療効果が期待できる、国内で承認済みの治療薬の情報が得られる)、(3)国内で臨床試験中の治療薬の情報が得られる(治療効果が期待できる、国内で臨床試験〈治験等〉中の治療薬の情報が得られる)、(4)海外で承認済み・臨床試験中の治療薬の情報が得られる(治療効果が期待できる、国内未承認、海外で承認済みあるいは臨床試験〈治験等〉中の治療薬の情報が得られる)を挙げている。

化学療法室
化学療法室
化学療法室(1人用)
化学療法室(1人用)
SPECT
SPECT
放射線治療計画用CT
放射線治療計画用CT



◆最新のCT、PET、SPECT、MRI導入

 公開した診断装置などは、以下のとおり。▽装置名=メーカー(製品名など)の順。▽一般撮影装置=島津製作所(RADspeed Pro2台)▽MRI=GEヘルスケア(SIGNA Artist、3.0テスラ)▽MRI=GEヘルスケア(SIGNA Artist、1.5テスラ)▽PET-CT=GEヘルスケア(Discovery M1)▽SPECT(核医学画像診断装置)=GEヘルスケア(NM/CT 870 DR)▽CT=キヤノンメディカルシステムズ(Aquilion ONE、0.25mm×160列)▽マンモグラフィ=富士フイルム(AMULET Innovality、3D〈トモシンセシス〉撮影機能)▽X線TV装置=キヤノンメディカルシステムズ(ultimax-i)▽放射線治療計画用CT(キヤノンメディカルシステムズ(Aquilion Exceed LB)▽骨密度測定装置=米国ホロジック社(Discovery)▽歯科用レントゲン装置=アクシオン・ジャパン(PanaACT)▽体外衝撃波結石破砕装置(ESWL)=独国ドルニエ社(Opticouple)

 また、救急室内にもレントゲン、CT、MRIなどを配置している。

一般撮影装置
一般撮影装置
MRI
MRI
全身用CT
全身用CT
マンモグラフィ
マンモグラフィ
X線TV装置
X線TV装置
放射線科受付
放射線科受付



 画像診断においては、海外を含め専門の医師4人体制で、365日24時間にわたり、画像診断に対応する。院内の救命救急室の常勤医師および院外の待機医師が画像を診断するほか、24時以降は、海外との時差を利用し、海外の医師による遠隔診断を実施する。

(この稿続く)
(編集長 倉知良次)

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