2020年9月に、パナソニック(株)の半導体事業が台湾のヌヴォトンテクノロジーコーポレーション(NTC)に譲渡されて発足したヌヴォトン テクノロジージャパン(株)(NTCJ、京都府長岡京市)。パナソニック時代から培ってきた技術を台湾のネットワークを通じて展開し、順調に成長軌道に向かっている。代表取締役社長の小山一弘氏に新会社の取り組みや今後の戦略を聞いた。
―― NTCおよびNTCJの概要から。
小山 NTCは台湾の大手メモリーメーカー、ウィンボンドのLSI事業が08年に分離して発足した。米国、イスラエルに開発拠点、中国に販売拠点を持ち、シンガポールにOSATの統括拠点を置く。当社は本社に加えて北陸にタワーセミコンダクターとの合弁製造会社のタワーパートナーズセミコンダクター(TPSCo)がある。また傘下に工場のスマート化などを行う子会社を持つ。
―― 製品戦略を。
小山 NTCグループは一般的には目立たないが強い「Hidden Champion」を目指すという方針を掲げている。それに合わせ当社は4つのビジネスグループ(BG)に製品を分け、それぞれに特化したマーケティング担当を置いた。コンポーネントはスマートフォン向けで50%以上のシェアを持つ電池保護ICやローカル5G基地局向けで実績を持つRF-GaN、加工機向けなどに展開するLDがある。バッテリー・アナログソリューションは車載電池やデータセンター用蓄電システム向け電池計測ICやモータードライバー、ビジュアルセンシングは映像情報の取得と処理を担うイメージセンサーやISP、DSPを擁する。IoTセキュリティーはマイコンや最高クラスの堅牢性(EAL6+)を実現したセキュリティーデバイスなどがある。
これらはいずれもパナソニック時代から培ってきた製品だ。30年に向けたメガトレンドの気候変動や人口動態などにフォーカスしたテーマである、新エネルギー、スマートモビリティー、スマートライフに展開する。例えば、電池計測ICは航続距離の延伸に加えて劣化診断や残存価値を測定し、リユースの実現に貢献する。また水素エネルギーの利用拡大に向けて、ReRAMの酸化還元反応を利用した水素センサーを開発している。より多様な使用環境に対応可能となる。
―― NTCグループと連携を開始している。
小山 世界市場に向けてはNTCの海外グループ拠点を通じて販売するが、台湾には世界中の製品トレンドに関する情報が集まる。これにより最新のトレンドに即した製品展開が可能となった。これまで接点がなかった顧客も含め、引き合いが急増している。IoT関連のデザインインは前年比で3倍に増え、バッテリーでは10倍以上もの新規案件が出てきている。
一方、国内ではNTCのマイコン販売を当社が担当する。NTCと当社は製品の用途に重複がなく、ラインアップの拡充が可能となる。
―― 技術開発における取り組みを。
小山 各BGにおけるさらなる深化と、中長期的なイノベーションの創出の双方を推進する。中長期的な研究開発では社長直属にCTOを置くとともに、21年8月に専門組織の技術イノベーション室を設立した。NTCグループとの連携や国内の大学、国プロとの協業を推進する。また、IPの共通化などデバイス設計の効率化に向けた取り組みも行っている。
―― 生産の増強は。
小山 NTCグループ入り後すぐにTPSCoでの増産投資を決め、22、23年で100億円規模を予定する。今後も必要な投資は積極的に行う予定で、日本、台湾のファンドリーも活用していく。後工程は台湾のOSATを開拓し、新たな委託先でも生産する計画だ。
―― 足元の業績と今後の目標を。
小山 NTCグループ入り後の事業拡大により、21年度は前年度比で20%の増収を見込んでいる。また、収益面でも譲渡が完了した20年9月以降は四半期ベースで黒字を達成できている。キャリア採用も行っているが、1年あまりで約80人を採用することができ、なかには半導体業界で実績を積んだ人材も含まれている。台湾系半導体専業メーカーとして再出発した当社の本気度が期待を集めたと考えている。
24年度まで年率10%程度の売り上げ成長を目標とする。特にカーボンニュートラルへの取り組みを強化し、省エネ化製品の販売比率を50%(21年度30%)、車載・産業用電池制御の出荷を21年度比で250%に高める。
(聞き手・副編集長 中村剛)
本紙2022年2月3日号1面 掲載