商業施設新聞
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No.422

ヒモがゆるゆる


高橋 直也

2013/8/20

 この原稿がWebにアップされる頃には、夏の全国高校野球大会も終盤に差し掛かっているだろう。野球好きが多い弊社オフィスでは、夜8時を過ぎると甲子園の話題で持ち切りである。当新聞の編集長も、筆者の斜め向かいの席で「甲子園行きて~」と呟いている。
 筆者も野球大好き人間であり、甲子園球場には何度も観戦に行ったことがある。駒大苫小牧高校の田中将大投手と、早稲田実業学校の斎藤佑樹投手の投げ合いを生で見たのは、一生の思い出である。決勝戦と、決勝再試合のチケット半券は今でも家にしまってある(はず)。

 ところで、甲子園球場を訪れるたびに「あれ?」と思うことがある。試合を観戦し、野球場を出て、駅で切符を買おうとすると、サイフのお金が「イリュージョンしている」のだ。どういうことかというと、どうやら球場内でかなりの浪費をしているようなのだ。主にビール、その他の飲み物、カレーといったフード類に使っているものと思われる。
 駒大苫小牧と早稲田実業の決勝、それから決勝再試合の2試合では、使った金額は7000円近くになった。甲子園球場のホームページで料金表を見ると、カレーなどもそこまで高くないのだが…。スタンドで売り子から買ったビールはいくらだったろうか?600円くらいだったと思うが、試合が盛り上がるにつれ、ビールも進んだ記憶がある。そのほかには揚げ物系も食べていた気がする。いずれも1品当たり数百円単位のはずだ。それが積もりに積もって7000円に到達したということか。貧乏人にとって、気分の盛り上がりに合わせてサイフのヒモも緩んでいくというのはやっかいである。

大丸東京店もエステなどを積極的に配置
大丸東京店もエステなどを積極的に配置
 商業施設を運営する側に立つと、「お客の気持ちを盛り上げて、消費意欲を喚起する」というのは欠かせない手法である。少し前にリラクゼーション店やビューティサロンを取材したが、某百貨店の担当者が「キレイになると、気分が高揚して消費意欲が上がる」と語っていた。この効果を狙ってか、実際、百貨店には複数のフロアにビューティサロンを設置しているところが多い。

 ところで先日の仕事終わりに、全国に数百店を展開しているファーストフード店に夕食をとりにいった。カウンターに10席ほどの店内である。券売機で食券を購入し、席についた。すると、目の前にあるキッチンがサビ、カビ、しみだらけなのに気がついた。空腹だったはずなのに、それを見て一気に食欲がうせた。前金の食券制でなければ、店を出ていたであろう。提供された食事は別にまずくはないのだが、満足度は大変低い食事になってしまった。

 食事でも、買い物でも、訪れた客を気持ちよくさせるのが商業施設。そういう意味で、筆者にとっての商業施設のお手本は甲子園球場といえよう(言い過ぎか?)。とはいえ、そこは個人差もあるようで、この原稿を書きながら編集長に「甲子園って金使いますよね~」と話を振ったら、「オレ、全然使わないけど?」と言われてしまった。
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