2021年の半導体設備投資は、30~40%増という驚異的な伸びを見せることになったようだ。年初段階では10~15%程度の伸びが見込まれていたが、毎月のように上方修正され、世界全体の設備投資金額としてはおおよそ14兆円強が投入されたと見られている。
しかして重要なことは、これが投資過剰とは言えないことだ。2021年の半導体生産額は20~30%増になっており、60兆~65兆円くらいに達した可能性がある。過去のシリコンサイクルを見れば、半導体生産額に対して、半導体設備投資金額が20~25%以内に収まっておれば、市場が大崩れすることはない。言い方を変えれば、シリコンサイクルの大きな谷間、つまりは一気下降が考えられない。それゆえに、2021~22年の半導体設備投資は決して過剰にはなっていない。今のところ、2022年の半導体設備投資は前年比10%増になる見込みであり、15.5兆円くらいが予想されている。
この間の設備投資の特徴は、何と言っても先端ロジックプロセス、さらにはファンドリー投資が牽引していた。さらにパワーディスクリートやアナログなども不足していることで、レガシープロセスにも投資の活況をもたらした。また、メモリーではDRAM投資が活発であり、1Znm以降の微細化ならびにキャパシティー増強投資が進められた。2022年は、データセンター投資拡大が予想されるだけに、NANDフラッシュメモリーの投資が再び活況になる可能性が出てきている。
EUVリソグラフィー装置への投資は拡大しているものの、ASMLの限られたキャパシティーはTSMCやサムスンなどによる取り合いとなっており、インテルになかなか回ってこない。このためインテルは、TSMCのファンドリーを活用することも考えている。半導体製造装置を含めた機械関連に組み込まれるFPGAの不足も深刻化している。価格は非常に高騰している。また、コロナ禍が続く中で、航空貨物便が減少しており、装置出荷におけるボトルネックとなっている。
国内最大手の東京エレクトロンは、通期業績予想を1兆8400億円に引き上げており、5割に迫る成長率を達成しそうだ。ロジック、ファンドリー、NANDフラッシュ向けの投資拡大が有利に働いた。
SCREENも21年7~9月期にSBE部門の受注高が994億円と過去最高を記録した。21年度通期売上高は、前年度比36%増の3200億円を計画するという状況だ。もちろん、得意技である洗浄装置が絶好調で推移した。
テスター最大手のアドバンテストも売上高は4000億円に乗せてくる。2年前が2759億円であっただけに、この急増ぶりには目を見張るものがある。とにかく倍々ゲームで伸びている。SoCテスター市場の想定は、約38億~約41億ドルに引き上げた。ディスコも好調を維持しており、OSATの投資意欲が中国を中心に衰えを見せておらず、高水準をキープしており、売り上げは2000億円をかなり上回りそうだ。また、東京精密も主力のウエハープローバーに加え、ダイサーやブラインダーの売り上げを伸ばしており、21年度は大台の1000億円となり、なんと2年前の倍増という勢いだ。
デバイスメーカーの設備投資は2022年度も好調で推移するだけに、国内製造装置各社もこれに備えて能力拡大を大幅に図る考えだ。ただ、最大のボトルネックは部材の確保なのである。とりわけ製造装置に使う半導体と樹脂系部品の供給が非常にタイトである。さらにはコネクター、プリント基板などの電子部品系も相当に不足している。汎用パーツの不足感が顕著であり、サプライチェーンを追いにくい状況を生み出している。また、物流インフラも厳しい。航空貨物が減少することで、出荷タイミングに遅れが生じている。
それにしても、今やニッポン半導体の主役はデバイスから装置へと軸が動いている、と思えてならない。国プロも動き出しているのであるからして、デバイスの奮起を強く促したい。
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泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2020年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。