SHKライングループは、1948年に設立された関光汽船(株)を母体とする、歴史ある海運グループだ。国内外に豊富な航路を有するグループ会社のネットワークを活用し、物流および旅客事業を手がけている。新型コロナの拡大以降、安定的な輸送に適する高速フェリー物流への注目が高まっているという。同グループの代表を務める入谷泰生氏に話を伺った。
―― 貴社は日本で初めて長距離フェリーを運航されました。
入谷 高速道路すら整備されていなかった1966年当時、日本で初めて片道300kmを超える長距離フェリーを神戸~小倉間に就航した。これが当グループの長距離フェリーへの挑戦の始まりだ。創業者である入谷豊州はグループ会社である新日本海フェリー、阪九フェリー、関釜フェリーを一代で築いた。グループ名の“SHK”はこれら3社の頭文字をとっている。
―― 展開している航路について教えて下さい。
入谷 国内航路としては、新日本海フェリーとして日本海沿岸に高速フェリーを含む4航路を、阪九フェリーとして関西~北九州を結ぶ大型フェリーを運航している。また、21年7月には、関東~北九州を結ぶ東京九州フェリーが運航を開始した。国際航路は関光汽船が、下関~中国・蘇州(太倉港)間を結ぶ蘇州下関フェリー、下関~韓国・釜山間を結ぶ関釜フェリーを運航しているほか、中韓を結ぶ国際輸送を行っている。国内外の豊富な航路ネットワークを活かすことで、ワンストップで最短の輸送計画を立てられることが、当グループの強みとなっている。
―― フェリー物流のメリットを教えて下さい。
入谷 当グループのフェリー輸送は、「海よりも速く、空よりも安く」をモットーに掲げている。コンテナ船よりも速く、航空輸送にも劣らないスピードを実現しつつ、コストを削減できることが特徴の1つだ。定時運航による確実性、RORO(Roll On/Roll Off)方式による荷役時間の短縮、下関港の迅速な通関対応などが、「海より速く」のスピードを実現させている。
―― RORO荷役について教えて下さい。
入谷 トレーラーにより直接貨物を船内に積載する方式で、積み替えがほとんど不要となる。クレーン輸送がなく、貨物への衝撃を大きく減らすことができるので、振動を嫌う半導体製造装置・部品などのエレクトロニクス関連の輸送にも非常に適している。衝撃が少ないことで、梱包の簡易化が可能になり、SDGsへの貢献も期待できる。
―― 21年度4~9月期の業績は。
入谷 半導体装置・部品関連の輸送は非常に伸びている。取り扱う製品は、九州をはじめとした西日本からのものがメーンで、中国・韓国向けに輸出している。特に中国航路に関しては、上海浦東空港での新型コロナ防疫対策強化による便数の削減や、コンテナ船の逼迫による輸送遅延および運賃の暴騰が影響して、フェリー輸送の引き合いが増加した。下関~中国・蘇州航路は、過去に見ない好業績だ。現時点で、中国向け貨物は金額ベースで7~8割増となっており、通期でもこの強さが続くだろうとみている。
―― 不規則な事態にも強いのが、フェリー輸送なのですね。
入谷 フェリー輸送の強みの1つに、多頻度かつ定時制を重視した運航体制であることが挙げられる。加えて、グループ会社のネットワークを利用し、ブッキングから通関、海上輸送、現地配送まで一貫対応することで、常時安定したスケジュールでの輸送が可能だ。コロナ禍でこの安定性に注目が高まっている。今までフェリー輸送を知らなかった方々にも広まってきており、継続的な引き合いも見込めそうだ。ウィズコロナ時代に適した輸送手段の1つとして、活用し続けてもらえれば嬉しい。
(聞き手・有馬明日香記者)
本紙2021年12月23日号8面 掲載