電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第54回

「○○ちゃんのお母さん」とだけ呼ばれる人生はイヤだ!!


~セラミックフォーラムの香川真以さんが語るIT業界の生き方~

2013/8/16

セラミックフォーラム(株) 開発営業部 香川真以さん
セラミックフォーラム(株)
開発営業部 香川真以さん
 「ママとかお母さんとか、年をとっておばあさんとだけ呼ばれる人生はイヤですね。女性であっても、常に名前で呼んでほしい。○○ちゃんのお母さん、というだけの人生は決して選びたくないのです」
 こう語るのはセラミックフォーラム(株)(東京都江東区青海2-7-4、the SOHO 735、Tel.03-6457-1251)にあって様々な半導体やIT部品に使う外国製の材料を販売する業務にある香川真以さんである。この会社は半導体分野で言えば、SiCウエハー製造のシークリスタルの正規代理店となっている。またスウェーデンのエピウエハーの製造メーカーであるアスカトロンも扱っている。要するに日本のパワー半導体メーカーやICメーカーに、最適な材料を外国から仕入れ提供しているベンチャーカンパニーなのだ。

 さて、香川真以さんは鹿児島県薩摩川内市で生まれ、3歳のころに奈良に移り、実質的に育ったところは三重県であるという。父は医療機器のエンジニア。名張西高校を出て、米国オレゴン州に1年間語学留学する。その後、クリニックの医療事務、コールセンター、さらには中古車カンパニー、豪州に渡航して旅行代理店勤務などを経て2012年5月に帰国する。そうしてセラミックフォーラムに入社しIT/半導体業界に身を投じることになるのだ。

 「入社時に半導体は正直言ってよく分からなかったけれど、ネイティブな英語については自信がありました。セラミックフォーラムという会社にひかれたのは、何といっても自由に何でも任せてもらえるという社風でした。また、仕事の関係でドイツ、スウェーデンなど主にヨーロッパの様々な国に出かけることも多く、それもまた魅力でした」(香川さん)

 彼女が尊敬するセラミックフォーラムの社長は、常々次のような言葉を口にするという。日本という国は女性の力、外国人の力、老人の力、博士の力をうまく利用していない。それゆえに、香川さんのような女性力が大きな戦略になると見ているようだ。
 「社に入ってからは開発営業という仕事に就きましたが、要するに何でもやるのです。御用聞きから始まり、実際的な見積もり、発注まですべてこなします。海外からの輸入材料は日本を代表する大手エレクトロニクスメーカー、自動車メーカーにはかなり入っています。当社が扱う製品はみな品質が良いために、売っていても自信があります。また、他社製品との差別化も詳しく説明します」

 彼女から見て日本のITエンジニアは、どのように眼に映るのだろう。
 「機械と話をするのは得意だけれど、人間と話すことは苦手、という人は多いです。また、女性と話すことに慣れてない人も多いです。日本人の場合、英語によるプレゼン能力は他国に比べて圧倒的に弱いですね」

 彼女の指摘するように、商談における英語の演出力で負けていることが、日本のIT産業衰退の一因とも言えるのは確かだろう。筆者が取材で接していても、外国人は驚くほど押しが強い、しかして印象は非常にさわやかだ。ところが日本人は押しが弱いくせにプライドだけは高く、偉そうな態度でカバーしようとするのだ。これでは勝てない。

 ところで、激戦地ともいうべき半導体分野に身を投じた香川さんの趣味はなんだろう。
 「実は、趣味を1つに絞れない女なんですよ。本でも映画でも情報でも人でも、とにかくいろんなものに出会いたいのです。外国映画が好きなのは字幕なしで見られるからです。だけどスポーツはあまりやらないタイプです。太陽の降り注ぐひまわりというよりは、日陰にひっそりと咲く淡い花が良いと思います」

 当然のことながら、女性であるからしてファッションにはこだわるという。黒や紫を基調にまとめるのが好き、だというが、あまりウィンドウショッピングをしないで、スーツを買う時にも30分で決めてしまう人だという。カバンはプラダ、アニアリの皮物。ちなみに取材時に身に着けていた小物は、アメリカのクロムハーツであった。

 最後に、恋愛観や人生哲学について聞いてみたところ、次のような答えが返ってきた。
 「男の人は頭の回転が良くない限り、何の魅力もありません。素敵な恋愛をしたいけれど、カップルではなくてパートナーでなければダメですね。恋愛もまた独立採算制を望むのです。お互いに自立心のある対等な関係で生きていきたい。また、仕事は自己実現の手段と考えています。決して報酬が先に来るのではありません」


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。日本半導体ベンチャー協会会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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